■年齢に応じイメージを

 昨年からがんの生存率についての調査結果が相次いで発表されました。意外にがんにかかっても5年、10年を問題なく過ごすことができるのだと思われた方も多いのではないかと思います。そのような中で最近は、10年程度を問題なく過ごしたのちにがんが悪化した場合、どう向き合っていくか悩むという場面に遭遇することが増えました。医療が発達し、健康寿命を延ばそうという取り組みによって、高齢者の平均余命もまた延びてきており、このような悩みを抱える人は今後さらに増えていくだろうと予想します。

 例えば75歳でなんらかのがんと診断され、そのときには「あと10年生きられればいい」という目標を立てたとします。医療者側もその目標や患者さんの思いを共有し、がんと共存しながら10年間つつがなく過ごすことができ、患者さんは85歳になりました。75歳のときにはこんなに元気に過ごしているとは想像していなかった、年は取ったが身の回りのことは自分ででき、歩くのにも問題ない、ああよかった―。そんなときに「がんが悪化している、これまでの治療では不十分です」と言われたとして、10年生きられたから目標は達成できた、もう何もしない、と考える方がどのくらいいらっしゃるでしょう。

 しかしながら85歳からあらためてがん治療と向き合うとなると、75歳のときと同じようにはいかないことがたくさんあります。次の目標をどう設定するか、あと3年、あと5年、どこまで元気でいられるだろうか、そういったことを、75歳のときとは違う視点で考えなければなりません。高齢だからという「だけ」で必要な医療を行わないのも正しい選択ではないと私は考えますし、また高齢者だからがんの進行も遅いはず、といった間違った解釈も禁物です。

 このような場合に、より多くの選択肢を持ち、よりよい方法をご提案するのが私たちの役割なのですが、まだまだ模索は続きそうです。

(なかおたかこクリニック院長 中尾孝子)

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