登録有形文化財にするよう答申された大隈重信記念館=佐賀市水ケ江2丁目

洪水を防ぐために地元住民によって建設された「大谷川隧道」の上流側坑口。れんがのアーチが美しい=唐津市千々賀

 国の文化審議会(馬淵明子会長)は10日、佐賀市水ケ江2丁目の大隈重信記念館と唐津市千々賀の大谷川隧道(おおたにかわずいどう)を登録有形文化財(建造物)にするよう松野博一文部科学相に答申した。昭和中期に建てられた記念館は大隈の体と精神を表現、明治期の隧道はれんが造りのアーチが歴史的景観をつくっていると評価した。

 大隈重信記念館は1966(昭和41)年に建てられた鉄筋コンクリート2階建て。大隈の生誕125周年を記念し、地元の早稲田大卒業生を中心に資金を集め、大隈旧宅の隣接地に建設した。早大名誉教授の建築家今井兼次(1895~1987年)が設計、松尾建設が施工した。

 複雑で柔らかな曲面で構成、外観は県木のクスと大隈の体を表現している。内装で東西の柱を結ぶアーチは大隈が掲げた東西文明の調和を、ステンドグラスの採光は大隈の精神や風格を表す。文化審議会は「建物自体が大隈侯の人間像、人間愛を体現した芸術作品としての特色がある」「施工技術の高さがうかがえ、日本近代化に貢献した大隈侯の足跡に触れることのできる建物」と評価した。

 江口直明館長(69)は「大隈侯がクスのようにどっしりと佐賀の地に根差している印象を受ける。多くの人に記念館を見に来てほしい」と声を弾ませる。

 大谷川隧道は1911(明治44)年建設のれんが造りの水路トンネル。全長92メートルで、アーチに積まれた坑口の高さは2メートル強。山裾を迂回(うかい)する大谷川の洪水を防ぐため、最短距離で徳須恵川(松浦川支流)につなぐバイパスの役割を果たす。

 地元住民が工事を手掛け、固い花こう岩質の山肌に穴を開ける難工事の末に完成した。現役の構造物で、現在は上部に西九州自動車道が通る。文化審議会は「れんが造りのアーチが竹林の中にたたずむ整姿は美しく、国土の歴史的景観に寄与している」と評した。千々賀の大浦昭治区長(72)は「地元でも知らない人がいる。先祖の努力が記録に残る」と喜ぶ。

 登録されれば、県内の登録有形文化財(建造物)は40カ所104件となる。

■平城宮木簡、国宝に

 国の文化審議会は10日、平城宮跡(奈良市)から出土した奈良時代の木簡3184点や、深大寺(東京都調布市)にある飛鳥時代の銅造釈迦如来倚像(しゃかにょらいいぞう)など7件の美術工芸品を国宝に指定するよう、松野博一文部科学相に答申した。横浜港で保存・展示されている帆船「日本丸」など37件を重要文化財に指定することも求めた。

 近く答申通り指定され、美術工芸品の重要文化財は1万686件(うち国宝885件)となる。

 平城宮跡の木簡には、役所の日常業務の記録や各地からもたらされた物資の荷札などが含まれ、当時の社会や経済の実態を伝える貴重な史料となっている。既に重要文化財になっていたものなど3184点を一括し、木簡としては初の国宝に指定する。

 銅造釈迦如来倚像は飛鳥時代後期の名品として知られ、少年を思わせる柔和な表情が特徴。

 日本丸は船員養成のため1930年に建造された全長約97メートルの帆船。戦前の船は現存数が少なく、建造当初の姿をよく残している点でも貴重と評価された。

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