抹香や線香の原料に用いられるシキミ

 梅の花に遅れて、咲き始めるシキミの花。淡い黄白色で、細く長い花びらが柔らかそうです。ちぎるとツンと香る常緑の葉は、抹香や線香の原料に。香りの強さをよく知っていた昔の人はシキミを墓の周りに植え、亡きがらを動物がかぎつけ、掘り返すことがないようにしていたとか。夏から秋には八角状の星形のかわいらしい実が結ばれますが、これが有毒。食べれば死に至ることもあることから、悪(あ)しき実、シキミと名前の由来になりました。

 毒は実だけでなく樹皮や葉、根にも。そのため人向けの薬として用いることはありません。ひつぎに納めたり、仏前、墓前に供えたりと死の印象がつきまとうシキミ。しかしそれは別れがたいからこそ。シキミが死の香りを打ち消してくれる間だけは、逝ってしまった命がとどまってくれるような気がして…。(中冨記念くすり博物館)

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