古湯温泉街に整備された石畳の生活道路。車道沿いの低い街灯には、車がぶつからないようにコーンが設置されている=佐賀市富士町

 佐賀市富士町古湯の温泉街に整備された石畳の生活道路を巡り、賛否の議論が持ち上がっている。自治会や地元の旅館関係者らが「観光客がゆっくり歩いて楽しめるように」とアイデアを練り上げ、完成にこぎつけた道路。観光客の評判は上々だったが、住民からは「歩きにくい」「でこぼこで転んだ」という苦情も出ている。景観と安全性をどう両立させるか、温泉街は思案している。

 石畳の道路は旧国道323号の約800メートルの区間。温泉街の迂回(うかい)路に当たる富士バイパスが2012年に開通した後、嘉瀬川ダム振興計画の一環で県が整備した。15年3月に完成し、事業費は約1億6千万円。

 熊本市の並木坂や札幌市宮の森の石畳道路を参考に、黒と白の御影石を敷き詰め、味わいのある景観を目指した。歩行者のために、通行する車が速度を抑えるように工夫もした。ぎりぎりで離合できる幅にしたり所々でさらに狭くしたりして、脇には植栽も施した。

 完成後、石畳のでこぼこの影響で「車の通行音がうるさくなった」「歩きにくい」という苦情が住民から上がった。地元関係者によると、つまずいて骨折した人もいる。車道の両側の平らな歩道を狭く感じ、石畳の車道に出て歩く人もいて、「手押し車が使いにくい」という声もある。

 夜間の歩行者の転倒を防ぐため、足元を照らす低い街灯を設けているが、車からは見えづらいのか、ぶつかる事故も起きている。

 石畳の生活道路の整備案は住民主導でまとめた。「温泉地にふさわしい道をつくろう」と、自治会や旅館関係者らが2011年に勉強会を立ち上げ、7回の会合を重ねた。自治総会や住民説明会では整備案を説明する時間を設け、計画の周知と合意形成に努めた。

 町外から訪れる人たちの間では「観光地らしくなった」と好意的に受け止める意見が多いという。一方、住民の中には不満もくすぶり、ある男性は「道路ができてから不便さや危険性が分かった。高齢者が多い地域だから安全対策はできないのだろうか」とこぼす。

 山口澄雄自治会長(67)は「方向性は間違っていなかった」と考えているが、「この道路が完璧だとは思っていない。改善すべき点があれば、市や県と協議したい」と話す。

 地域づくりに詳しい佐賀大学地域資源学研究室の五十嵐勉教授(人文地理学)は「温泉地で景観整備に力を入れるのは当然。ただ、道路は、住民にとって安全安心でなければならないのが大前提」と指摘する。その上で「事業主体の県が主導し、折り合いがつくような再協議の場を設けるのも一つの手段」と助言する。

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