里親の女性(左)は「愛情を注ぐことが、この子の将来に役立てば」と考えている=唐津市

 さまざまな事情で生みの親と暮らせない子どもを別の家庭で養育する「里親制度」で、里親への委託が伸び悩んでいる。佐賀県内の里親の登録数は昨年4月1日現在、72世帯で、そのうち25世帯が0歳から18歳までの34人を育てている。実の親が「子どもが奪われてしまう」と誤解するケースがあり、関係者は制度の一層の周知とともに、里親の掘り起こしを進めている。

 県中央児童相談所によると、親の病気や虐待行為で社会的養護が必要な児童は284人(昨年4月1日現在)。5年前より里親登録数は25世帯増えたものの、養育が委託される児童は例年30人前後にとどまる。

 国は委託率の全国平均を2019年度までに22%に増やすことを目指しているが、県内は15年度末で15・5%にとどまっている。

 県里親会会長の時津千春さん(49)=唐津市=は「入院などで養育が困難な親が子どもと生活できるようになるまでの間、預かって育てる養育里親など制度自体が知られていない」と指摘。そのため「『子どもを奪われる』『面会できない』と思い込み、委託を拒む人が多い」と話す。

 唐津市で里親をしている女性(49)は、男児(5)と女児(2)と暮らす。「愛情が最も必要な時期に、こうして家庭で育てることはこれからの人生にとって重要」と考えている。

 事務職の名古屋市の女性(20)は高校卒業まで、佐賀県中部の里親家庭で育った。0歳から施設で育ち、10歳の頃、里親と暮らし始めた。それまでは集団生活しか知らなかったため困惑し、「帰りたい」と何日も泣いたという。しかし、どんなにかんしゃくを起こしても、反抗期に暴言を吐いても、寄り添ってくれる里親に心を許していった。

 「わがままを聞き、愛情を与えてくれ、甘えさせてくれた。血縁がなくても本当の家族」と女性は感じている。里親の役割は子どもが18歳になるまでだが、「いつでも帰っておいでと言ってくれる」といい、盆や正月には帰郷し、年に1回は家族で旅行する。

 里親制度に関わる関係者によると、以前は「社会貢献をしたい」という動機が多かった。近年は不妊治療に苦しんだ夫婦が「子育てをしたい」と登録するケースが増えているという。

 ただ、乳幼児との養子縁組というイメージは根強く、中高生を受け入れる家庭は限られている。多感な時期の少年少女への向き合い方が難しいと考え、二の足を踏む傾向がある。

 県中央児童相談所の坂本健福祉副主幹(49)は「さまざまな年代の子どもに里親は必要だが、登録者の絶対数が少ない。子どもの性格や生育歴を考慮したとき、相性が合う里親家庭がなかなか見つからない」と話し、里親希望者の掘り起こしや制度の周知に力を入れている。

【里親制度】

 里親には、親が育てられるようになるまでの一定期間育てる「養育里親」や、両親がいない子どもを親族が育てる「親族里親」という制度がある。また、虐待を受けた子らに専門的な対応をする「専門里親」、養子縁組を前提に育てる「養子縁組里親」もある。

 特別な資格はないが、25歳以上で児童への愛情があること、経済的に困窮していないことなどの条件がある。県内では30~70代が登録している。

 育てるのは乳児から18歳まで。里親登録後、児童と里親の希望が一致すれば、児童相談所が委託する。里親手当や生活費、教育費が支給され、医療費は公費で負担される。問い合わせは佐賀県中央児童相談所、電話0952(26)1212。

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