年内合意を目指していた日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉は、双方の溝が埋まらず、来年1月以降に持ち越されることになった。環太平洋連携協定(TPP)の発効が絶望視される中、日本は日欧EPAにどう向き合うべきだろうか。

 ヨーロッパの28カ国が加盟するEU。その巨大市場が開かれれば、日本とEU合わせて世界の国内総生産(GDP)の3割を占める巨大市場が誕生することになる。規模ではTPPの4割には及ばないものの、世界有数の自由市場を日本が手にする意味は大きい。

 欧州に進出している日本企業を対象にした日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査では、日欧EPAが実現すれば「メリットが大きい」とする企業が37・8%を占め、「デメリットが大きい」はわずか1・5%だった。経団連と、ヨーロッパの経済団体「ビジネスヨーロッパ」も足並みをそろえて、年内合意を求める共同文書を出してもいる。

 日本にとって最大のメリットは、ヨーロッパの自動車市場の開放だろう。現在、日本車のEUへの輸出には10%という高い関税が課せられている。これは、米国市場の2・5%と比べてはるかに高い。これが撤廃されれば、日本企業にとってはTPP以上のメリットをもたらすだろう。

 最大の課題は、国内農業への影響をいかに抑えるかである。TPP交渉では、日本側はコメなど5品目を“聖域”と位置づけて交渉に臨んだが、最終的には大幅な譲歩を受け入れてしまった。

 今回、EUとの交渉が越年したのも、EU側がTPPを上回るレベルの譲歩を日本側に迫ったからだ。具体的には、チーズの全品目の関税撤廃を要求している。日本は国内の酪農・畜産業を保護するため、輸入チーズには29・8%などの高い関税をかけている。TPP交渉でも日本はチーズを重要農産品のひとつとして、カマンベールやモッツァレラなどの関税は守り切っている。

 さらにEU側は、日本での輸入が米国、カナダに次いで多いデンマーク産豚肉などを念頭に、豚肉の関税引き下げでも攻防が続く。

 これまでの日本国内の論議を踏まえれば、TPP以上の譲歩に踏み切るのは難しいだろう。先週開かれた自民党本部の会合でも反発の声が相次ぎ、衆参両院の農林水産委員会が急きょ、豚肉や乳製品などの関税確保を相次いで決議するいう動きもあった。

 ただでさえ、食料自給率が4割しかない日本にとっては、食の安全保障の観点からも簡単に譲るわけにはいかないだろう。

 ただし、交渉に残された時間は限られている。というのも、春先になれば、フランスやドイツなどEUの主要加盟国で大統領選の動きが本格化する。政権移行期に入れば、EU側も大胆な政治決断は難しくなるからだ。

 しかも、英国のEUからの本格的な離脱交渉も控える。日本としては、こうしたEU側の政治状況をにらみながら、年明け早々にもEPAの合意をまとめあげるべきだろう。この機を逃せば、TPPに続いて日欧EPAまで漂流しかねない。時間的な制約は厳しいが、国民的な理解を得つつ、交渉を進めてもらいたい。(古賀史生)

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