「若い時には若い心で生きて行くより無いのだ。若さを振りかざして運命に向かうのだよ」-。浄土真宗の宗祖・親鸞(しんらん)が、まだ若い弟子の唯円(ゆいえん)をさとす。大正から昭和にかけて活躍した脚本家、倉田百三の名作『出家とその弟子』の一場面である◆女性の元へとひそかに通い詰める弟子の姿を危ぶみつつ、親鸞はただ見守る。若さを持て余す唯円に、親鸞は「恋とは人間の一生の旅の途中にある関所のようなものだよ。この関所の越え方のいかんで多くの人の生涯はきまると言ってもいいくらいだ」と語り掛ける◆きょうは「成人の日」。1996年4月から97年3月生まれが、大人の仲間入りを果たした。当時を振り返れば、歌手の安室奈美恵さんをまねた「アムラー」が街にあふれ、プリクラや「たまごっち」が売り出された◆バブル崩壊から数年たち、日本経済が「失われた20年」に入った頃でもある。生まれた時から不況で、格差は広がる一方。今年の新成人は、どう現実と折り合うかに長(た)けた、堅実な世代なのかもしれない◆冒頭の親鸞の言葉は「純な青年時代を過ごさない人は深い老年期を持つ事もできないのだ」と続く。恋に限らず、若い時期を存分に生きたかどうかが、その後の人生の在りようをも決める。思いきり生きよう、若さを振りかざして-。ようこそ、大人の世界へ。(史)

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