嬉野市で1人暮らしをしている80代の女性宅を、民生委員の女性とお邪魔したことがある。こぢんまりとした部屋は清潔に整えられていて、テーブルに一輪の花。心待ちに迎えてくれたのが伝わってきた◆「何か気がかりなことはない?」という問いをきっかけに、家具を動かそうとして腰を痛めてしまった話、健康への不安などが次々に飛び出してきた。出されたお茶を飲みながらの雑談だったが、高齢者の困りごとが何か、どんな支援ができるのか、民生委員はしっかり受け止めようとしていた◆民生委員制度はきょう、創設100周年を迎えた。1917(大正6)年に前身の「済世顧問制度」が岡山県で始まり、佐賀でも、その7年後に導入された。地域の「相談役」として重要な役割を担うが、なり手不足が深刻だ。県内では18人の欠員が出ているが、それでも充足率99・2%は全国トップクラスという◆特別職の公務員とはいえ、無報酬のボランティアで、支払われるのは交通費や通信費として年5万9千円だけ。「地域の人々のために」という、高い志がなければ続けられる仕事ではない◆1人で暮らすお年寄りは「きょうは誰とも話さなかった」と振り返る日も多いと聞く。あのお茶がひときわおいしかったのは、来客をもてなす弾んだ気持ちが溶け込んでいたからに違いない。(史)

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