有名な「バベルの塔」の物語は、旧約聖書の創世記に記されている。ノアの大洪水の後、同じ言語を使っていた人々は都市を造り、頂が天に届くような塔を築き上げて、名を上げようとした◆すると神は人間たちの活動に恐れを抱き、人々の言葉を互いに通じなくした上で、散らした。こうして都市の建設はストップする。ここでの教えは、自分を神のようなものだと思い上がった人間の傲慢(ごうまん)、野心、覇権の否定である◆こちらも野心に満ちた所業と言わねばならない。おととい北朝鮮が発射したミサイルは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)だったと米政府が発表した。米本土を射程に収める技術を獲得したことで、脅威は新たな段階に入った◆バベルの塔を見た神は言う。「(人間が)始めた最初の仕事がこの有様(ありさま)だ。今に彼らの企てる何事も、不可能なことはなくなるだろう」。北朝鮮の覇権がどんどんエスカレートしていくのを目の当たりにし、背筋が寒くなるばかりだ。かの国の企てをくじく神ならぬ誰かが待たれるが、国際社会には手詰まり感が出てきている◆「この男は他にやることないのか」。北朝鮮の指導者をさして、トランプ米大統領は非難した。相手は核とミサイルこそが、体制を保証する絶対的な鍵だと考えている。通じる言語がほしい。今ほど強く思う時はない。(章)

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