大雨による濁流でえぐられた道路=5日午後6時半ごろ、福岡県朝倉市(同市提供)

 活発な前線の影響で5日、西日本全域で大気が不安定となり、中国地方から九州北部にかけて大雨が降った。気象庁は数十年に1度の災害の危険があるとして、午後6時前から順次、福岡、大分の2県31市町村に大雨特別警報を出した。2県で少なくとも7人と連絡が取れなくなり、午後9時現在、計約18万世帯の約43万人に避難指示が出された。島根県西部の4市町でも約5時間半、特別警報を発令。広島県で川に流されたとみられる1人の遺体がみつかった。

 福岡県朝倉市では、5日午後8時40分までの24時間雨量が観測史上最大の513ミリとなり、市全域の計約2万1千世帯、約5万4千人に避難指示が出た。市によると、川沿いにいた70代男性が行方不明になった。他に少なくとも5人が川に流されるなどしたとの情報がある。同県久留米市も全域の約13万3千世帯、30万人超に避難を指示。他の自治体でも避難指示が相次いだ。

 九州地方整備局などによると、福岡県添田町で彦山川が氾濫。大分県日田市で川の氾濫や道路の土砂崩れで数世帯が孤立するなどし、男性1人と連絡が付かなくなった。福岡、佐賀、大分、熊本各県の一部地域には土砂災害警戒情報を出した。

 安倍晋三首相は、災害応急対策に全力で取り組むよう関係省庁に指示。菅義偉官房長官は、福岡県東峰村で家屋が3軒流されたなどの110番があったと明らかにした。

 今回の大雨は、梅雨前線の動きに伴って線状降水帯の場所が変わり、九州北部に停滞したのが原因。福岡県朝倉市付近、鳥栖市付近、大分県日田市中津江付近などで、それぞれ1時間に110~120ミリ超の猛烈な雨が降ったと推計。3県の11市町村に「記録的短時間大雨情報」も出した。

 佐賀県は消防庁の要請を受け、県内五つの消防本部から19隊67人を大分県日田市に派遣した。

 島根県西部と隣接する広島県北部でも大雨となり、両県で一時、計6万人以上に避難の指示や勧告が出た。島根県では特別警報が解除された5日午後も、浜田、益田両市の計5地区で道路の寸断などにより一部が孤立状態に。鳥取県の防災ヘリコプターが住民の救助に当たった。

 広島市安佐北区の鈴張川の中州では同日午前、同区の93歳男性が死亡しているのが見つかった。広島県警は増水した川で溺死したとみている。【共同】

■鳥栖市も一時大雨

 鳥栖市付近では、レーダーによる解析雨量で午後3時40分までの1時間に120ミリ以上の雨を記録した。県内は6日も雨が続く見込みで、佐賀地方気象台は「低い場所への浸水や河川の増水に警戒を」と呼び掛けている。

 気象台によると、県内では6日午前9時ごろにかけ、時間帯や場所によって1時間に30~50ミリの強い雨を予想している。地盤が緩む恐れがあるとして、土砂災害への注意も呼び掛けている。

■「辺り一面海のよう」

 あちこちで川が氾濫し、濁流が家々を襲った。「田んぼも道路も水没し、辺り一面が海のようだった」。猛烈な雨で、住民らが見慣れた景色は一変した。数十年に1度の災害の可能性があるとして5日、大雨の特別警報が出された福岡、大分両県。雨が降り続き、被害の全容も見えず、避難した住民らは不安を募らせていた。

 「安心していたら、10分ぐらいで、あっという間に家が水に漬かった」。福岡県添田町の公共施設「オークホール」に避難した同町の看護師遠城久美さん(69)は、自宅で膝下まで浸水した時の恐怖を振り返った。

 ゴーッという川の音が大きくなり、約15軒の集落に濁流が流れ込んだ。「パニックになった」が、集落全体ですぐに消防に救助された。「これからどうなるのだろう」。鳴り響く雷鳴に不安な表情を見せた。「自宅に残してきた飼い犬が心配だ」。福岡県朝倉市に自宅がある会社員羽野友子さん(57)は、買い物から帰宅できなくなり、コミュニティーセンターに急きょ避難したという。【共同】

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