安倍政権が発足して5年目に入った。依然として50%を超える高い支持率を誇り、「安倍1強」の政治状況が続く。安倍晋三首相は年頭会見で「未来に向かって、今こそ新しい国造りを進めるときだ」と憲法改正への意欲を示したが、国民的な合意をどうまとめていくつもりだろうか。

 安倍政権は民主党から政権を奪還した2012年の衆院選以来、昨年夏の参院選まで、国政選挙で4連勝を収めてきた。衆院では改憲の発議に必要な3分の2議席を確保している上、参院でも単独過半数を握り、改憲勢力を合わせれば、こちらも3分の2の圧倒的な議席を手に入れた。

 まさに国会は「自民1強」時代であり、自民党内を見ても安倍首相の対抗馬は見当たらない「安倍1強」が続く。自民党総裁の任期も延長され、2021年9月までという長期政権が見えてきた。

 盤石に見える安倍政権だが、個別の政策への評価は意外なほど低い。

 昨年12月中旬に実施した共同通信の全国世論調査では、カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法、いわゆるカジノ法案への反対は7割に近い。安倍首相が「平和条約への重要な一歩」と胸を張った日ロ首脳会談にしても、「評価する」は4割にも届いていない。

 重大な事故が相次ぐ新型輸送機オスプレイの配備に至っては、「見直した方がよい」が66・8%で、「続けてよい」は3割もない。自民党支持層でも、配備見直しを求める意見が多数を占めている。

 つまり、政策そのものが評価されているというわけではないようだ。国民の間にはいまだに民主党政権の無残な記憶があまりにも強く、安倍政権以外の選択肢がないというのが実態ではないか。加えて、日本を取り巻く国際情勢が不透明さを増しており、有権者は安定感を重視してもいるのだろう。

 ここにきて安倍政権は、強引な国会運営が目につく。合意形成のプロセスをないがしろにするようでは、政権のアキレス腱になりかねない。

 一方、野党第1党の民進党は党勢回復の兆しさえない。野田佳彦幹事長が「背水の陣ではない。すでに水中に沈んでいる」と述べたように、蓮舫氏がトップに就いても状況は好転しないままだ。

 特に有権者にとって理解しにくいのは、野党共闘の在り方である。次の衆院選は政権を選ぶ選挙になる。選挙戦略を優先するあまり、自らの理念を脇に置いてしまうのだろうか。

 遠回りのようでも、どのような政策を打ち出すのか、そのためにどこまで協力関係を維持するのかをきちんと整理する過程は欠かせないはずだ。候補者の絞り込みだけが野党共闘ではあるまい。

 今年はこの国の在り方が問われる年になる。昨年はオバマ大統領の広島訪問、そして安倍首相のハワイ真珠湾訪問で、日米両国は戦後にひとつのけじめをつけた。

 憲法施行から70年の節目を迎え、改正論議はいよいよ本格化する。ひたすら「改正ありき」では困るが、これからの日本を考える上で、憲法を考える意義は大きい。安倍政権には、数の力にたのんで強引に進めるのではなく、国民の声に耳を傾けつつ、謙虚な国会運営を望みたい。(古賀史生)

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