<ぼくが ここに いるとき/ほかの どんなものも/ぼくに かさなって/ここに いることは できない/もしも ゾウが ここに いるならば/そのゾウだけ/マメが いるならば/その一つぶの マメだけ/しか ここに いることは できない>◆詩人まどみちおさんの「ぼくが ここに」である。人間だけでなく、象も豆も等しく命は育まれ、それぞれに尊いとうたっている。国内で唯一、親が育てられない子どもを匿名で預かっている熊本市の施設「赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)」は、設置から10年がたった◆2015年度までに託されたのは125人。そこにたどりつく理由はさまざまだが、望まない妊娠でも、赤ちゃんの命の重さに差などありはしない。誰かが力を貸さねば生きられない、かけがえのない命である◆確かに匿名ゆえ、親を知らずに育つ苦しさは想像を超えたところにあるだろう。そこに人権上の課題を抱えていて、育児放棄を助長するとの批判もあるが、人の命とはかりに掛けることなど到底できない。一民間施設まかせにしてきた国の無策こそが問題である◆くだんの詩は<ああ このちきゅうの うえでは/こんなに だいじに/まもられているのだ>と続く。一人一人の命が大切にされる。その一点だけでも、この施設の存在意義はある。(章)

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