雲にはふたつの種類がある。広い範囲を幕のように覆う「層状」の雲と、塊になって上空へ伸びていく「対流性」の雲である。違いは上昇気流のスピード。層状の雲は毎秒数センチとゆっくり。対流性は毎秒数メートルから十数メートルとすさまじい◆気象エッセイスト倉嶋厚さんの『お天気歳時記』(チクマ秀版社)で学んだ。上昇気流は、下降気流と互いに補いあう関係で「積乱雲のすぐ隣に下降気流があり青空になっていて、降る雨も『馬の背を分ける』ように局地的になることが多いのです」◆まさに、この現象が起きているのだろう。九州北部を記録的な大雨が襲った。川が氾濫し、濁流が町をのみこみ、犠牲者まで出ている。脊振山系あたりを起点にする線状降水帯が、福岡や大分方面へと伸びたという◆梅雨前線の豪雨は「下からは空一面に低い層状の雲が広がっているように見えても、上から見ると積乱雲がところどころでニョキニョキと超高層ビルのように林立しているのです」と倉嶋さん。昨年の熊本地震の傷も癒えぬのに、今度は暴力的な雷雨とは◆地球を覆う雲のうち、雨を降らせる雲はわずかで、ほとんどは「できては消え、できては消えている」だけ。雨を降らせる特別な雲を、倉嶋さんは「空の水道の蛇口」と呼ぶ。「この蛇口、壊れてるんじゃないか」。つい恨み言が口をつく。(史)

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