起業家育成をうたったセミナーを受けた人が「受講料が高く内容も不十分だった」と訴えトラブルになる事例が増えている。会員制交流サイト(SNS)を通じた勧誘が特徴で若者が標的になっている。警察は「学習意欲を利用した巧妙で詐欺的な手口」と注意喚起し、摘発に乗り出している。

 「楽しい毎日が過ごせて収入も増える」。福岡県内の大学4年の男性は2015年9月、SNSで知り合ったセミナー関係者からの誘い文句に魅力を感じた。大学では企業経営を専攻し「人脈が広がる」という点にも興味を引かれた。

 受講料は総額約130万円。受講前に指示を受けて消費者金融3社から借りた金を充てた。

 しかし初回の講座では「このセミナーに勧誘するとランクが上がる」と言われ、家族や知人の連絡先をリストアップさせられただけだった。「マルチ商法だ」。退会を決意したが、主催者は「クーリングオフはできない」と主張。男性は「親には相談できず、就職活動にも取り組めなかった。自分も甘かったが、真面目に学びたい者を食い物にして許せない」と憤りを隠さない。

 国民生活センターによると、これら起業家育成セミナーなどに関する相談は2010年度の385件に対し、15年度は倍以上の805件と増加傾向にある。海外旅行の写真を投稿するなどして若者を引きつける主催者もいるが、担当者は「SNSではいくらでも演出できる」と指摘する。

 福岡の大学生が受講したセミナーは、福岡県警が「マルチ商法の勧誘方法を教えていたにすぎない」と判断。昨年11月に5人が特定商取引法違反(事実の不告知など)容疑で逮捕、うち4人がその後、詐欺罪で起訴された。捜査当局は、約320人と契約し約2億1600万円を集めたとみる。

 この大学生のように100万円以上借金させるケースも相次ぐ。国民生活センターは「『お金がない』と断ろうとするのを封じる手口で、とにかくすぐ相談してほしい」と呼び掛ける。【共同】

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