国立ハンセン病療養所菊池恵楓園に保管されていた絵画クラブ「金陽会」の作品と吉山安彦さん=熊本県合志市

 国立ハンセン病療養所菊池恵楓園(熊本県合志市)で、入所者が描いた850点以上の絵画が保管されている。隔離政策の中で光を求めた入所者らの貴重な作品群。関係者は「後世に伝えたい」と、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(世界記憶遺産)登録も視野に、保存活動を本格化させている。

 「何か打ち込める趣味を持たないと、とても生きていけなかった」。17歳で入所した吉山安彦さん(87)は、絵を描き始めた気持ちを振り返る。

 国の誤った隔離政策で社会との交流を閉ざされたハンセン病患者。園では1953年、男性看護師の呼び掛けで、絵が好きな入所者約15人が集まり絵画クラブ「金陽会」が発足した。当初は集まる曜日から「金曜会」としたが、重苦しい療養所生活の中で「絵だけでも明るく描こう」という思いから改称したという。

 入所前に一度だけ参加した小学校の遠足、故郷の島の風景、持つことがかなわなかったわが子…。2003年に熊本市現代美術館で一部の作品が展示されると、反響を呼んだ。関心を持った元同美術館学芸員の蔵座(ぞうざ)江美さんの昨年の調査で、作者が亡くなるなどして、人知れず保管されていた450点以上の存在が新たに判明。集まった油絵や水彩画は、合計で850点を超えた。

 それらのデジタル化や修復作業に取り組む蔵座さんは「表現とは何か、という根源的な問いを見る側に投げ掛ける作品群だ」と指摘。「多くの人に触れてもらうため、ゆくゆくは『世界の記憶』への登録もできれば」と、思いをふくらませる。

 金陽会の作品約40点は、京都市の東本願寺「しんらん交流館」で1月29日まで展示されている。【共同】

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