政府はアフリカの南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣している陸上自衛隊を5月末に撤収する方針を示した。活動が5年に及び、担当する道路整備のめどがついたのがその理由だという。しかし、国内の反対論を押し切って「駆け付け警護」を新任務に加えた経緯を考えれば、このタイミングでの活動終了は不可解だ。もっと丁寧な説明が求められる。

 安倍晋三首相の撤収表明は突然で、「国造りは新たな段階を迎える。施設整備も一定の区切りをつけることができた。自衛隊はこの5年間、過去最大の実績を積み重ねた」と記者団に語った。首相の持論は「積極的平和主義」だけに、「5年」という歳月を理由とした撤収には違和感を覚える。

 なぜ、このタイミングか。集団的自衛権行使を容認する安保法制の成立に関わった中谷元・前防衛相は「まだまだ貢献できる部分はある」と戸惑いを隠さない。自衛隊関係者も「撤収するなら、現地の治安が悪化した昨年7月。あまりに不自然」と政治に振り回された不信感をにじませる。

 安倍首相は国会の審議で、昨年9月から検討していたことを明らかにした。昨年7月に自衛隊が駐留する首都で大規模な戦闘行為があったことを考えれば、時期的に符合するものの、政府が「治安悪化が理由ではない」と繰り返すために議論が深められない。

 また、昨年9月に撤収検討を始めたのなら、なぜ、隊員に危険が生じる「駆け付け警護」を11月に閣議決定したのか。今はまだ警護する事案が発生していないが、実績づくりのために強引に組み込んだと批判されても仕方がない。

 今国会では廃棄されたはずの南スーダンPKOの「日報」が見つかり、自衛隊員が現地は戦闘状態だと報告していたことが分かった。稲田朋美防衛相は「戦闘」となれば、自衛隊撤退が必要となるので「武力衝突」と言い換えた。

 その経緯からも、不測の事態が起きれば、安倍政権へのダメージは大きい。突然の撤収方針は、政治的なリスクを減らそうとする政権側の意図も感じられる。

 とはいえ、内戦状態が続く現地の危険性を考えれば、体裁にこだわって駐留を続けるよりも賢明な判断だろう。同国では食糧不足も深刻だ。政府は600万ドルの支援を打ち出しているが、人々が安心して暮らせるためにできることは、まだあるはずだ。平和のための支援を継続したい。

 日本が現在展開しているPKOは南スーダンだけで、この任務が終了すれば、当面は活動がない。何もないときだからこそ、これからの国際貢献について冷静に議論を重ねていきたい。

 日本は憲法で武力行使を禁じており、PKOを通じた国際貢献に力を入れている。ただ、内戦が多発する国際情勢をみれば、近年のPKOは市民の保護が求められ、武器を使用する局面も多いという。日本のPKOは今、施設整備が中心だが、憲法上どこまで可能なのか再確認する必要がある。

 そのためには南スーダンPKOの事後検証が欠かせない。現場で何が起き、隊員たちは何を感じ、どう行動したのか。机上の議論で見えない課題がそこにある。現場の肉声である日報を隠したようなやり方を繰り返せば、実態に即した議論はできない。(日高勉)

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