南スーダンの昔話に始原の物語がある。人々はその昔、病気も死もない川の水の下に住んでいた。しかし人口が増えすぎてしまい、漁師のリーダーが陸地に住めないか調べに出る◆そして彼は悪い知らせを持ち帰った。「陸地には、獣(けだもの)がいて病気と死があるぞ」と言い、川の国を離れることを禁じるが、人々は窮屈なのに飽き飽きして反乱を起こし、陸の国に殺到する。こうして人々は苦しみと死に満ちたこの世の現実に直面したのである(『ライオンの咆哮(ほうこう)のとどろく夜の炉辺で』)◆平和な国から紛争のある国に-。今の南スーダンの現状がそうだろう。昨年、事実上の内戦が再燃して難民が急増。その地に派遣中の陸上自衛隊の国連平和維持活動(PKO)部隊を、政府が撤収と決めた◆判断そのものはうなずけるが、政府の説明が解せない。治安悪化が理由ではないという。それはそうだろう。「治安に問題はない」と言い続けてきたのだから同じ舌では言えまい。部隊の「日報」に記された「戦闘」があったのかが問題にもなった。この上、部隊に「もしも」のことがあれば、政権の地雷原になると恐れたとしても無理はない◆神話の時代から争いと死がある国だ。その活動から教訓を得ることこそが大切である。安全が保証されるPKOはない。それを前提にした検証が欠かせない。(章)

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