教育費に関する自民党特命チームの会合であいさつする馳前文科相(中央)=10日、東京・永田町の党本部

 安倍晋三首相の発言を受け、高等教育の無償化に関する議論が熱を帯びてきている。無償化に必要な巨額の費用をどう賄うのか-。自民党内では増税や教育国債の創設などが提案されているが、大学卒業後の「出世払い」を制度化するとのアイデアが新たに浮上してきた。幅広く国民負担を求める従来の考え方とは一線を画す内容で、注目を集めそうだ。

 「高等教育についても全ての国民に真に開かれたものとしなければならない」。憲法記念日の3日、安倍首相は改憲派の会合に寄せたビデオメッセージで、義務教育だけでなく、大学などでも無償化が必要だとの考えを表明した。

 しかし、文部科学省によると、国公私立大などの授業料を無償にするには、約3兆7千億円が必要。表明自体に唐突感がある上、財源の見通しがあるわけでもなく、実現へのハードルは高い。

 一方で国の将来への投資とも言える教育無償化を支持する声が強いのも事実で、これまでも自民党は特命チームを設けて財源を議論してきた。

 増税は真っ先に挙がる選択肢だが、厳しい経済状況の中で国民の理解を得るのは簡単ではない。教育国債についても、国の借金が増えることに変わりはなく、財務省などの反対は根強い。

 それらを補う形で浮上したのが、英国やオーストラリアなどで導入されている出世払い方式だ。授業料は国がいったん肩代わりして無償とする代わりに、卒業後の年収を捕捉、一定割合を源泉徴収するとの内容で、年収が一定基準を下回る場合は徴収を免除する。

 出世払い方式を導入する際の初期投資には教育国債の活用が見込まれる。出世払いで徴収した資金の一部は教育国債の償還に充て、残りは次の大学生の授業料分に回す仕組みだ。特命チーム主査を務める馳浩・前文科相は出世払い方式について「教育国債とともに、日本型の制度を検討していきたい」と前向きだ。

 東大の小林雅之教授(教育社会学)は、出世払い方式を「採用する価値のある制度だ。源泉徴収で回収コストも安くできるし、年収が低い人に返済を求めなければ、恐れずに進学できる」と評価する。

 ただ、全額を税金などでまかなう無償化とは性格が異なり、結局は進学者に負担がかかる。公平性の問題もありそうだ。小林教授は「無償化は生活全体をどう設計するかという議論と不可分で、国民一人一人が考える必要がある」と話している。【共同】

 

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