アマミトゲネズミから作ったiPS細胞が混ざったマウス(宮崎大の本多新研究員提供)

 絶滅危惧種に指定されている国の天然記念物アマミトゲネズミの細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作り、精子や卵子に成長させることに成功したと、宮崎大などのチームが12日、米科学誌電子版に発表した。

 マウス、ラット以外の動物のiPS細胞から精子や卵子を作ったのは世界初といい、チームは「種の多様性を確保する手段としてiPS細胞が役立つ可能性がある」としている。

 アマミトゲネズミは鹿児島県の奄美大島にのみ生息する日本の固有種。森林伐採や野良猫などによる食害で個体数が激減している。生物学的にも、ほとんどの哺乳類の雄が持っているY染色体を持たず雌雄で遺伝情報の違いがほとんどないという珍しい特徴がある。

 チームは雌のアマミトゲネズミの尾からiPS細胞を作製。マウスの受精卵に入れた後に子宮に移植し、マウスとアマミトゲネズミの二つの細胞が混在する雄や雌のマウスを産ませた。

 これらのマウスが成長した後に精巣や卵巣の中を調べると、ほとんどがマウスの精子や卵子だったが、全体の0・03~0・29%はiPS細胞由来のアマミトゲネズミの精子や卵子だった。

 iPS細胞は医療以外に絶滅危惧種の数を増やす手段としても期待されており、九州大も地球上に3頭しか生き残っていないキタシロサイの卵子作りを研究している。

 宮崎大のチームは、現状では精子と卵子を取り出して体外受精させることは難しいとしており、今後は体外で効率的に卵子や精子を作る方法を研究し、受精卵の作製を目指す。【共同】

■識者談話 生殖能力の確認に期待

 九州大の林克彦教授(生殖生物学)の話 絶滅危惧種でiPS細胞ができたことは、絶滅に備える一つの手段として役立つ可能性があり、素晴らしい成果だ。精子や卵子の生殖細胞にも成長したということだが、次のステップとして、それらが実際に機能し、生殖能力があるかどうかを確かめる必要がある。子どものマウスからiPS細胞由来の精子や卵子を取り出すか、体外で培養する研究の進展が期待される。受精卵作製を見据えると、トゲネズミに適した受精環境を調べる基礎研究も必要だ。

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