大地と地平線、透明な天空の色の変化-。作品の一つ一つを見ているうちに、画家の面影が浮かび上がってきた。独立美術協会会員の故森通(もりとおる)さんの砂漠の絵である。その森さんに師事した山下智樹さん(58)=白石町=との師弟二人展が、佐賀市の画廊憩(やすら)ひで開かれている(22日まで)◆唐津で育った森さんは、作家の北方謙三さんの叔父である。仲のいい叔父と甥(おい)で、森さんが学生の北方さんを酒場に連れて行き、親交深かった詩人の草野心平や山本太郎らと騒いだ時期があった。北方さんがそうエッセーに書いている。叔父から創作の苦しさ、厳しさを学んだ◆北方さんは海のそばの別荘に、森さんの形見の砂漠の絵をかけているそうだ。二人展にも同じ系統の作品が並ぶ。「唐津の海のはるかな水平線が制作の原点」と言っていた森さん。訪れたアフリカの砂漠の地平線が、少年期の記憶を呼び起こしたのである◆山下さんは森さんに背中を押され画家になった。そのかけがえのない師匠を16年前に亡くす。恩を胸に、歯を食いしばって昨年、師匠と同じ独立会員の栄冠を手にした。ひび割れの赤茶色の大地に、時の堆積と人の生命力が感じとれる絵を描いてきたが、精神性の高さは森さんに通じているように思う◆師匠へオマージュを捧(ささ)げた二人展。泉下の森さんが一番喜んでいるだろう。(章)

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