佐賀交響楽団理事長 吉原敏郎さん

■主権者教育、記事に説得力 100の講義より効果ある

 2016年12月最後の日の紙面には、「ポピュリズム」という言葉が第1面から何度も顔を出している。これは、この1年の世界の出来事を象徴しているかのようである。イギリス、アメリカ、イタリアと大衆迎合政治の嵐が吹いた。これに警鐘を鳴らすように、「真実がないがしろにされ、感情的な訴えが幅をきかせた。ポピュリズムの酔いからさめられるか」と新年に期待を寄せている。

 12月は1年を振り返る記事が多かった。「国内・海外の10大ニュース」(31日付)や「読者が選ぶ県内10大ニュース」(29日付)に、「18歳選挙権」がそれぞれ6位や10位に登場している。これは、選挙権年齢が18歳以上になって初めての選挙が7月に行われた参議院選だったので、その成果にニュース性があったのは当然である。

 それを受けて、18歳の投票についての記載が多かった。特に、シリーズ「はじめの1票 18歳選挙権さが」は公選法改正後、戸惑いや模索が続く高校現場や現役高校生の声を多く取り上げていて、興味深く追いかけた。

 18日付に県内高校生の座談会の詳報が載った。「学級内では選挙の話はあまりなかった」「投票時に勉強不足を悔やんだ」「若者は声を上げていない、小さい時から政治に関心を持たせるべき」など、幅広い意見が出ていて頼もしさを感じた。19日、22日付には県内高校生を対象としたアンケート集計結果を載せて現役高校生の政治や選挙への考えや心境を浮き彫りにしている。6123人からの回答を集計分析しているので、かなり詳しく県内高校生の考えを理解することができた。

 「18歳選挙権で日本の政治や若者は変わると思うか」という問いに対して、「変わる」26.1%、「変わらない」27.9%と拮抗している。始まったばかりの18歳選挙権、高校生など若者に必要とされる主権者教育は学校だけに任せるものではなく、家庭や新聞などのメディアも多く参画していかなければならない。

 例えば、7月1日付「記者日記」に、『シルバー民主主義でいいの?』がある。イギリスのEU離脱を例にとり、18~24歳の75%が残留を支持したのに対し、65歳以上の61%が離脱に賛成票を投じたこともあり、離脱派が残留派を上回ったとの数値を示し、日本の若者に投票の必要性を説いている。

 もう一つ、11月28日付「きょうの言葉」に、『宣戦を布告するものは老人だが、戦死しなければならぬのは青年だ』(フーバー米国31代大統領)がある。平成26年の衆議院選の年代ごと投票率では20代は33%、60代は68%と2倍以上の差があるとし、若い人が自分たちの40年後をつくるには今から投票に行くしかない、と説いている。この二つの記事には説得力があり、100の講義より1行の記事が力を発揮するといっても過言ではない。

 さて、県内を見渡してもオスプレイ、諫早湾開門、玄海原発、教育、雇用、健康などなど、どれも新年に持ち越すものばかり。新しい年が穏やかなものとなることを願います。

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