政府が導入を進める罰則付きの残業規制について、安倍晋三首相は13日、連合の神津里季生会長と経団連の榊原定征会長に、繁忙期の上限を「月100時間未満」とするよう要請した。労使は合意する方向で、焦点だった残業上限問題は首相裁定で事実上決着した。政府は最長で年720時間とする上限を盛り込んだ働き方改革の実行計画を月内にまとめ、労働基準法改正に本格着手する。

 管理監督者を除き、民間の企業や団体に勤める労働者の大半が対象。長時間労働が続く職場では、労使協定や勤務時間の見直しが迫られる。

 安倍首相は会談で「労基法70年の中で歴史的な大改革だ。さらなる改革に向けて不断の努力を重ねていく」と意気込みを示した。会談後、榊原氏は「過労死を起こさないための経営側の決意と受け止めてほしい」、神津氏は「第一歩にすぎない。これから過労死根絶を進めていく」と硬い表情で語り、苦渋の合意だったことを感じさせた。

 2015年に電通に入社した長女高橋まつりさん=当時(24)=を過労自殺で失った母幸美さん(54)が「納得できない。繁忙期であれば、命を落としてもいいのか」とのコメントを発表するなど、過労死遺族は強く反発している。

 繁忙期の上限を巡っては、「100時間未満」とする連合と「以下」とする経団連が対立。労使の合意文書でも「100時間を基準値とする」とあいまいな表現にとどまった。

 首相要請について、榊原氏は「重く受け止める」と記者団に述べ、17日の政府の働き方改革実現会議で正式に回答する。

 残業規制案は、厚生労働省が目安としていた月45時間、年360時間を原則的な上限と規定。繁忙期に限り、特例で単月100時間未満まで認める。特例の延長分を含め、残業は年720時間までしか認めない。

 政府は、上限の目安の対象となっていない運転手や建設作業員らも猶予期間を設けて規制対象とする方向で調整する。

 連合と経団連は、終業から始業まで一定期間の休息を義務付ける勤務間インターバル制度導入の努力義務を企業に課す方向で一致。メンタルヘルスやパワハラ対策を進めることも求めた。【共同】

■現状の残業規制 労働基準法は労働時間を1日8時間、週40時間までとし、企業が時間外労働(残業)をさせる場合は、あらかじめ労使が合意して協定(三六協定)を結ぶよう定めている。厚生労働省は月45時間、年360時間を上限とする目安を示しているが、協定でこの時間を超える残業時間を設定することも可能。その上、特別条項を付ければ、協定を超える延長時間を設定することができるため、「事実上の青天井」と指摘されていた。

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