羽田空港の国際線発着回数を増やすため、東京都心上空を通過する形で設定される新ルートの一部は、米軍が管制権を持つ「横田空域」を飛行することが10日、政府関係者への取材で分かった。米側は、実務者間での調整で飛行を了承していることも判明。今後、空域の一部返還を受けるかなど、両国間で具体的な詰めの協議を進める。【共同】

 一部返還されれば2008年9月以来となるが、横田空域は羽田空港の管制空域の西側に隣接していて現状も多くの旅客機が迂回(うかい)を強いられている。羽田の機能を最大限活用するためにも、根本的な解決が求められそうだ。

 返還以外にも、連絡方法などを決めた上で運航ごとに許可を受ける方法なども適用可能で、両政府間の協議機関である日米合同委員会での正式合意の必要性なども検討するとみられる。

 政府は20年の東京五輪・パラリンピックまでに、羽田の発着枠を現在の年間44万7千回から最大3万9千回増やし、国際線に振り分ける方針で、実現にはこれまで避けていた都心上空ルートが不可欠だった。

 政府関係者によると、新たな着陸ルートのうち、埼玉県付近から南方向に直線ルートで降下する際、C滑走路では悪天時、A滑走路では好天時と悪天時のいずれも、さいたま市や練馬区上空などの飛行ルートが横田空域を通過することが判明。米側に通知した。

《解説》空の自由へ交渉加速を

 羽田空港の発着数を増やすための新ルート設定に、またも米国との調整が必要になったのは、米軍が管制権を持つ「横田空域」が首都圏の空に大きく広がり、日本が自由にコントロールできないためだ。飛行ルートは限られ、一部は過密化している。運航の安全に空の自由は欠かせず、政府は全面返還に向けた交渉を加速する必要がある。

 沖縄に米軍基地が集中しているのと同様、横田空域が存在するのも、戦後の日米安保体制が影響しており、今も沖縄や横田など米軍が管制権を握る空域が残っている。

 特に横田空域は、羽田空港の管制権のすぐ西側にあるため影響は大きい。例えば羽田から西に向かう場合、直線コースではなく、いったん北上するなどして高度を上げ、横田空域を飛び越える必要がある。

 飛行時間や燃料が余計にかかり、パイロットや管制官の負担も増え、空の安全に直結する問題だ。根本解決に向けた日本政府の姿勢が問われる。

 ■横田空域 新潟から静岡まで1都8県の上空に、高度約2450メートルから約7000メートルまで6段階の階段状に設定された空域。在日米軍の訓練空域などがあるため横田基地が管制を担当し、域内には厚木、入間など米軍や自衛隊の基地がある。日本側は全面返還を求めているが、米側は「米軍の運用上の問題で困難」としている。主に羽田空港の出発機が、北陸や西日本方面に向かうルートを遮る形になるため、南側への迂回(うかい)や高度制限を強いられている。1992年に約10%、2008年に約20%が返還された。

このエントリーをはてなブックマークに追加