無所属の現職と新人が争った三養基郡上峰町長選は、現職の武広勇平氏(37)が3度目の当選を果たした。町を二分した選挙戦が繰り広げられたが、有権者の審判が下された今、しこりを残さず執行部と議会が一体となって町政を前に進めてほしい。

 前回の無投票から一転して8年ぶりの選挙戦。公職選挙法違反による町長の失職を受けた2009年の出直し町長選は、元国会議員秘書だった武広氏が元副町長との激戦を制した。今回は武広氏を町議5人と町商工会などが支援、元町会計管理者の新人は町職員OBが軸となり、反町長派町議3人が応援弁士に立った。新人の陣営には前町長も姿を見せていた。

 上峰町は長らく「政争の町」といわれてきた。1959年から83年までは選挙の度に町長が入れ替わり、79年は票差が8票、95年25票というきわどい戦いもあった。町村合併への意見の異なる2派の争いが発端ともされる。その後、対立の構図は変わったとの指摘もあるが、この1年間、議会(定数10)は町長派5、反町長派5に二分され、混乱が続いた。

 例えば、昨年12月議会で議員に支給する費用弁償を再開する条例改正案を、執行部と協議しないまま議員提案した。財政改善を理由にしていたため、このニュースがネットで広がると、ふるさと納税寄付者から苦情が殺到し撤回に追い込まれた。

 2月議会では、小中学校の給食費無料化を含めた17年度一般会計当初予算案が否決された。予算特別委員会では採決に加わらない委員長が反町長派だったため5対4で可決した。しかし、本会議では、加わらない議長が町長派のため4対5の賛成少数で否決され、結果が逆転した。昨年12月に続く2度目の「待った」で、反町長派には選挙前に実績を積ませたくないとの思惑が働いたとみられる。

 委員会で可決しても本会議では否決されるという構図のため、昨年の議会人事では、両派で議長ポストを譲り合うという駆け引きもあった。議会が政争の具になっている証しではないか。

 一方で、いったん否決された給食費無料化を選挙直前の2月議会に再提案した武広氏の判断は疑問が残る。「対立をあおるばかりで、選挙対策と見られても仕方がない」との町民の声もあった。本来なら公約に掲げて勝利した後に再提案すべきとの指摘であり、それが通常のやり方だと思う。

 投票率は8年前に比べて約10ポイント下がって66・74%にとどまった。わざわざ期日前投票に来て白票を投じたという20代男性もいた。町長失職に伴う前回と単純には比較できないものの、投票率低下は混乱続きの町政・議会に対する有権者からの抗議とも見て取れる。

 選挙戦では「役場の雰囲気が暗く、早期退職者が増えている」などの指摘もあった。文部科学省から出向した副町長が着任3カ月で退職した件についても、説明が尽くされたとは言いがたい。

 武広氏が3期目の負託を受けたということは、こうした指摘に真摯(しんし)に向き合い、丁寧に説明し、議会との融和に一層努力する責任も負ったということである。役場を一つにまとめ、住民本位で政策を議論し、議会と両輪となって町政を発展させていくことを期待したい。(高井誠)

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