唐津城の前でアニメのシーンを再現し、記念撮影する女性ファン=唐津市東城内

■整う環境試される総合力

 年末年始の風景に変化が起きていた。唐津城やJR唐津駅周辺で、普段は見かけない若い女性グループの姿が絶えない。フィギュアスケートが題材のアニメ「ユーリ!!! on ICE」の舞台を回る“聖地巡礼”のファンだ。

 主人公の出身地のモデルとして描かれた唐津市。会員制交流サイト(SNS)で話題になり、昨年12月の放映終了後もファンの熱は冷めない。窓口に飾られた原作者のサインを目当てに市観光課を訪れる関東からの観光客も目立つ。

 「今までのトレンドとは全く違う動きが出ている」。ロケ地巡りプランを提案する唐津観光タクシー総務係長の多久島修さん(52)は反響の大きさに驚く。案内時は曳山展示場や唐津焼販売店の見学もさりげなく勧め、「唐津のすごい所を見せて帰すのが私たちの使命」と意気込む。

 豊かな食や自然、歴史、文化といった豊富な観光資源がある唐津市だが、観光客数は停滞気味だ。2008年の875万人をピークに減少し、15年(速報値)は764万人と7年で1割近く減った。宿泊客数(15年・55万4千人)こそ合併後2番目の水準まで持ち直したものの、国の地方創生交付金で発行した割引クーポンが押し上げた結果だ。

 15、16年に観光客の動態調査をした市観光課は「唐津は何でもそろっているのが強み。その半面、明確なイメージを打ち出せずにぼやけてしまっていた」と分析する。観光客の3割を占める福岡都市圏に絞り、伸びしろがある20~30代女性を呼び込むPRに切り替えた。ターゲットと年齢層が重なるユーリファンの声も戦略に生かしたい考えだ。

 点在する魅力をつなぐため、14年8月、既存の唐津観光協会を事務局に、官民で戦略を打ち出す「からつ観光協議会」が発足した。宿泊や飲食、農漁業、交通、物販など観光に関わる幅広い業種が参加し「オール唐津」の連携を強める。

 手始めにイカの呼子と名護屋城の鎮西を重点的にPR。壱岐フェリーの発着所が市中心部に移って以降、落ち込んでいた呼子の観光客が15年度、9年ぶりに100万人の大台を回復し成果も見え始めている。

 唐津くんちの曳山行事がユネスコ無形文化遺産に登録され、唐津東港は岸壁改修でクルーズ船受け入れの体制が整った。観光への追い風が吹く一方、訪日外国人をもてなす体制など課題は多い。

 観光協会の國谷恵太専務理事(61)は、観光と直接関係ない人を巻き込み、地域を回遊する仕組みを再構築できるかが今後の鍵と指摘する。「唐津にはしっかりしたブランドがある。ベストセラーだけでなくロングセラーが必要」。選ばれる観光地へ向け、総合力が試されている。

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