日本と欧州連合(EU)が経済連携協定(EPA)で大枠合意した。トランプ米政権などが保護主義に傾き、環太平洋連携協定(TPP)の行方が不透明になる中、国内総生産(GDP)で合わせて世界の3割を占める日本とEUが、開かれた貿易を推進することで合意した意味は大きい。

 関税を撤廃したり大幅に引き下げたりすることで、日本の消費者にとっては安く買える農産品などが増える。また、EU側が関税をなくすことで、EU向けの工業品輸出に競争力が増す。産業や社会の在りようが大きく変わる。経済活動の活性化、景気のさらなる底上げにつながることを期待したい。

 これによって日本とEUが自由貿易の恩恵を享受し、その様が伝われば、TPPに背を向けている米国も少しは振り返るかもしれない。

 一方で、割安な農産品が市場に流入することによって打撃を被る生産者への対応も不可欠だ。必要に応じ財政措置も検討し、ソフトランディングに導く中で、将来を見据え日本農業を強化する改革を着実に進めたい。

 国内市場の守り一辺倒ではなく、世界市場に攻め込むことを目指すべきだろう。取り組みは既に始まっているが、これを機に加速する必要がある。日本産の農産品を世界中の人々に楽しんでもらうにはどうしたらいいのか。これまで以上に農家の経営改革、商品開発、市場調査などに官民を挙げて取り組まなければならない。生産者の急速な高齢化、耕作放棄地の拡大などを考えれば、時間はそんなにない。関係者は危機感を持って臨んでほしい。

 交渉の最大の焦点は、日本からEUに輸出する自動車と関連部品、EUから日本に輸出するチーズの扱いだった。自動車は、ライバルの韓国が既にEUとの間で自由貿易協定(FTA)を結び関税を撤廃しているだけに、日本にとっては最重要テーマの一つだった。

 チーズは、日本国内で消費が大幅に伸び、食生活の変化や好みの多様化でさらに市場規模が拡大するのは確実とされており、EUは日本市場開放を強く求めてきた。

 交渉の結果、EUは自動車関税を8年目になくし、日本はチーズの輸入量の一部に低関税枠を設け16年目に枠内の関税をゼロにすることになった。それぞれに域内、国内事情を抱える中で、実効性が期待できるレベルでの合意にたどり着いたのではないか。

 2013年から始まった交渉は4年余り、合意目標の期限を延期しながら粘り強く進められた。米国がTPP離脱を表明した後はとりわけ、本格的な大型の自由貿易交渉として注目され、その成否に世界中の通商政策当局者、企業経営者らが注目していた。

 TPPの枠組みでは、米国をのぞく11カ国が7月中旬に神奈川県の箱根で首席交渉官会合を予定している。今回の日欧EPA大枠合意が、この協議に好影響を与えることも期待したい。

 残された課題もある。進出先で、不公平な条件を強制されて損害を被れば、企業が現地の政府を訴えることができる紛争解決手続きが先送りになった。現地で、企業が安心して投資や事業展開ができる安全網は必要だろう。それはEU側にとっても同様ではないか。担当者のさらなる努力を求めたい。(共同通信・高山一郎)

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