陶器市期間中は多くの来客でにぎわう有田内山の景観

 114回目を数えた、今年の有田陶器市が終わった。まれに見る好天にも恵まれ、目標を上回る128万人もの来客があり、大変喜ばしい限りである。ただ陶器市は、日々人口の10倍前後もの来客で町があふれる大イベントである。期間中は町の姿も一変し、風情のある焼き物の産地としての景観や日常に触れることは難しい。有田焼創業400年を契機とし、町では陶器市に限らない通年観光を目指しており、ぜひ多くの方々に、独特な文化や自然に満ちた普段着の有田も堪能していただきたい。

 観光と言えば、先日「観光マインド」という言葉が世間をにぎわせた。学芸員に限らず、今どきの文化財関係者に、逆に「観光」を意識しない人は珍しい。むしろ、積極的に文化財を観光資源として活用すべきであろう。ただ、あくまでも文化財サイドが前提とすべきは、文化財の保護・保存であり、その上で、それをいかに活用していくかという順序がある。

 かつて、高度経済成長期頃に文化財関係者に求められたのは、「観光マインド」ならぬ、いわば「開発マインド」。今回と同じロジックで、開発を阻害する文化財関係者は一掃すべし、とでも言われかねない時代であった。しかし、不要なので壊せだったはずが、今度は観光資源としてもっと生かさないとはけしからん、ということらしい。時代が違うと言えばそれまでだが、風潮に流されず残すべきは残すことが必要なのであろう。(有田町教育委員会学芸員・村上伸之)

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