自宅仕事場で陶板に向かう吉田博之さん=有田町上内野丙

「お客さんのどんな注文にも応じていきたい」と話す吉田博之さん

■多彩な絵柄写実的に

 「こんな物を作ってきた」と見せてくれたアルバムには、浮世絵風の美人画や西洋画を思わせる女性の立像、さらには犬や猫まで、さまざまな絵柄の陶板やつぼ、皿が並ぶ。いずれも鮮やかな色使いで写実的に表現している。

 鹿島市生まれ。子どものころから絵を描くのが得意で、20歳で有田の窯元に就職。上絵付けを中心に、6尺(約1・8メートル)の大皿や畳1畳ほどの陶板に描くことが多かったが、今は岩尾磁器で特別注文品や食器などを手掛ける。

 仕事では「お客さん本位」を心掛ける。酒造メーカーが注文した限定ボトルの絵柄では、メーカーのデザイナーと何度もやり取りを続け、完成までに半年近くかけた。「自分だけうまくできたと思ってもだめ。注文した人が満足して喜んでくれるのが一番」と強調する。

 客の注文で大型淡水魚のアロワナを描いたこともある。アロワナ自体、その時初めて聞いた言葉だった。図書館やネットでいくつもの画像を調べて仕上げた。「プロだから注文があったら描けないとは言えない。昔は図書館にこもっていたけど、今はネットがあるから楽になった」と話す。

 アロワナなど前例がない絵柄に挑戦することも「勉強になる」と楽しむ。その上で、現代的な表現も取り入れる。「どんな注文にも応えたい。そのためにも勉強は欠かせない」と、旅先で風景を見たり、テレビを見るときも細部の動きや色使いに注意する。「視点が変わったというのか、ほかの人と違う所を見ているようだ」と笑う。

 上絵付けの面白さは「多彩な色が使えること」。色の幅を広げるため、伝統的な絵の具の代わりに洋絵の具を調合することもある。青一色の濃淡で表現する下絵付けの魅力を感じながらも「根っから絵を描くのが好きだからね。使える色が多い方がいい」と話す。

 若いころ、先輩に仕事の進め方を質問したが「自分で考えろ」と教えてもらえなかった。だが、自らは聞かれたことは教えようと思っている。「まず自分で考え、他人の仕事ぶりを観察することは大切。それでも分からなければ、いくらでも尋ねてほしい」。培ってきた技術を次の世代に伝えることも、伝統工芸士の役割と考えている。

 よしだ・ひろゆき 1959年鹿島市生まれ。有田町内の窯元を経て2006年岩尾磁器入社。1993年伝統工芸士(上絵付け)認定。有田町上内野丙3726―6、電話0955(46)3987。

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