記者会見を開き、玄海原発3、4号機の再稼働への同意を表明した山口祥義知事。新設は認めない考えも明言した=4月24日、佐賀県庁

■玄海町長、業界「中長期で必要」 依存度、廃炉絡み思惑交錯

 佐賀県の山口祥義知事が4月下旬、九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働同意を表明した際、原発新設は認めない考えも明言したことが波紋を呼んでいる。立地する玄海町の岸本英雄町長や電力業界は中長期的には新設が必要との持論で、国は既存原発の再稼働を優先し「現段階では想定していない」と述べるにとどまる。原発への依存を低減する将来像は、それぞれの思惑が交錯し、不透明さが漂う。

■同意の裏返し

 「仮に今、新たに原発を造るという判断を求められても、決して同意するつもりはない」-。再稼働に同意した4月24日、山口知事は自ら今後の原子力政策の一端に踏み込んだ。

 九電は2011年の福島第1原発事故前まで新増設を検討していたが、現時点で玄海原発に増設の計画はない。あえて触れた理由について、山口知事は佐賀新聞の取材に「玄海原発が存在する上での(再稼働同意の)判断なので、その裏返しとして言った。新たな立地なら、それはないよということ」と語る。原発に頼らない社会を目指す中で「新増設やリプレース(建て替え)は考えられない」と、在任中は堅持する方針だ。

 一方、玄海町の岸本町長は取材に「原発を新しく造る必要はある」と答え、知事の考えとは一線を画す。「新規制基準がある現状では難しいのも事実」としつつ、玄海1号機の廃炉を踏まえ、「電力に依存する今の社会で、玄海3、4号機の再稼働だけでは供給面に心配がある」と主張する。

■一定規模

 国は原発の新増設に関し「現段階では想定していない」と今後に含みを残す。14年策定のエネルギー基本計画は原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、30年度の電源構成比率で20~22%に戻す方針。九電など大手電力会社で構成する電気事業連合会(電事連)は、運転期間の原則40年に伴う廃炉の増加もあり、中長期的には新増設や建て替えで「一定規模は確保する必要がある」と強調する。

 電事連などによると現在、全炉心でプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使う電源開発大間原発(青森県)を含め3基が建設中。加えて、事実上凍結している九電川内原発3号機(鹿児島県)や中国電力上関原発1、2号機(山口県)など8基の新増設計画がある。

■正直難しい

 新増設に関し九電の瓜生道明社長は4月末の会見で「今の制度でも触れられておらず、国の方向性も出ていない。原子力の比率をどうしていくのか、国全体の議論が待たれる」と注視する姿勢を見せた。ただ、自身は「正直、難しいと思う」と吐露する。

 知事の発言に対し、玄海原発の操業停止を求める訴訟の原告団長を務める長谷川照・元佐賀大学学長は「原子力政策の課題のうち比較的楽な話を打ち出しているにすぎない」とみる。たまり続ける使用済み核燃料や廃炉の先行きが見通せない中で「今は新増設より、玄海が最終処分地になるのではという不安の方が大きい。住民の声を真剣に聴けば分かるはず」と指摘し、これらの問題に明確な立場を示すよう求めた。

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