人は誰しも自分が正しいと思っている。そこで生じるのが人と人との衝突(誤解)である。

 私は今、週末や平日夜間にボランティア活動を行っている。「被害者支援ネットワーク佐賀VOISS」と「いのちの電話」である。これらの活動の中でよくみられる相談は、家庭内暴力(DV)、ハラスメント、性的暴力、いじめ、児童虐待などである。

 相談で共通しているのが、加害者は自分の行動がどれだけ相手を傷つけているのか分からないということだ。自分の行動が常識から外れていることに気づかないのである。その修正も極めて難しい。

 なぜそのような行動をとるのか。客観的にみて、その行動がどうなのかと考える余地があると思われるが、それがうまくいかない。また鍵と鍵穴のような人間関係の組み合わせにおいて、問題が顕在化し、深刻化することもある。

 結局、家族や職場において、加害者と被害者が一緒にいることはリスクが高いと思われ、いったん両者を離した方が良いという結論になる。家庭では家族の離別、職場では退職や配置転換である。和解に向けて努力するが、それがなかなか難しい。一度、壊れてしまった人間関係を修復するのは困難で、残念ながら元に戻らないことが多い。このような問題を未然に防ぐために何ができるのか。もし問題が生じたとしても、深刻化を回避できるのだろうか-。

 問題を引き起こしている人は過去に同じような悩みを経験している。すなわち問題の連鎖である。つまり、自分が受けてきたつらい経験を誰かに復讐(ふくしゅう)するかのごとく、無意識に同じ過ちを繰り返していることがある。

 ふと内省する余裕があれば、自分の行動のゆがみに気づく人もいる。気づかずに、何度も失敗している人は、誰かに自分がとっている行動を客観的に評価してもらうことが大切だ。それでも気づかない人は、おそらく誰からも相手にしてもらえず、生涯、孤独な人生をたどることになるだろう。皆さんには、自分の行動を第三者の目でみてくれる人がいますか?(佐賀大学保健管理センター長・産業医 佐藤武)

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