「恋ってのは、それはもう、ため息と涙でできたものですよ」-。シェイクスピアの『お気に召すまま』では、恋の未練が語られる。彼女/彼にささげた時間や情熱を考えれば、すんなりとは断ち切れない。この未練を経済用語に置き換えれば、「サンクコスト」(埋没費用)と呼べるかもしれない◆例えば、先の見通しが立たない事業から撤退しようにも、それまでにかけた費用や労力を考えてしまうと、なかなか決断はしにくい。この無駄になってしまう投資が、サンクコストというわけだ◆夢の原子炉と呼ばれた高速増殖炉もんじゅ(福井県)の廃炉が決まったが、あれほど手痛い目に遭っても、“恋心”は一向についえないようだ。後継炉をどうするかの動きが活発になってきた。フランスとの共同研究案が浮上しているが、新たに数千億円もかかるという◆撤退か、継続か-。経済学では過去に投じたサンクコストは完全に切り離して、判断材料とはしないのが合理的とされる。つまり、これからどうするかだけに焦点を当てるのが最善の道だとか。高速炉計画をあきらめきれないのは、サンクコストが気になるからだろうか◆え? これまでもんじゅにつぎ込んだ額は1兆円を超えるって? しかも、20数年で動いたのはたった250日だけって? そりゃもう、ため息しか出ない。(史)

このエントリーをはてなブックマークに追加