「天使とは、美しい花をまき散らす者ではなく、苦悩する者のために戦う者である」-。その献身ぶりから「クリミアの天使」と呼ばれた英国人看護師ナイチンゲールは、その呼び名を好んではいなかったようだ◆九州北部豪雨による被害の全体像が徐々に明らかになってきた。死者・行方不明者が増え続けている。日田市では消防団の山本岳人さん(43)が土砂崩れに巻き込まれて亡くなった。住民に避難を呼びかける途中だったという。友人や恩師らの言葉から、地元愛にあふれた熱血漢の姿が浮かび上がってくるが、遺された3人の子どもたちが痛ましい◆暴れ梅雨は、いつまで続くのか。濁流が飲み込んだ家屋をかき分けながら、孤立した住民の元へと向かう自衛隊や警察、消防、けが人を治療する医療関係者、すべてを失ってたどりついた人々を避難所で迎える自治体職員…。それぞれ立場は違えども、命を救うという一点で力を合わせている◆ナイチンゲールは、自己犠牲による支援には懐疑的で「犠牲なき献身こそ真の奉仕」が持論だった。誰かの犠牲だけでは長くは続けられない。組織だった仕組みが必要と考えたのだろう◆いま、この瞬間にも被災者を救おうと力あわせて汗を流す人たちがいる。「天使とは苦悩する者のために戦う者」。ナイチンゲールの言葉をかみしめる。(史)

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