開発した男性用クリームを手にする「YOKO・JAPAN」の田中洋子社長=唐津市紺屋町の同社

自社のオリーブ化粧品を持つ「ハーベスト」の山浦康男社長=唐津市宇木のオリーブ園

■望まれる成功事例

 「情熱ある唐津の人たちとなら何かいいものができる」。昨年11月、唐津市浜玉町で進める倉庫建設の地鎮祭で化粧品業界トップの原料商社の若手社長がほほ笑んだ。化粧品産業の集積を目指す「コスメティック構想」で初の拠点整備。大手の原料供給企業だけに呼び水と期待が高まる。

 佐賀県や東松浦郡玄海町と連携し、坂井市政の3期目に動き出したコスメ構想。つばき油やミカンの花など地域素材を化粧品に活用し、同時に唐津を仲介に国際的なビジネス展開を模索している。今月下旬には5社の地元産商品の国際化粧品展(東京)への出展、5カ国目となるタイの業界団体との連携協定も控え、徐々に姿が見え始めてきた。

 化粧品は製造業平均の約2倍の高付加価値産業として魅力があり、成長するアジア市場への輸出も関心は高い。3年前、14団体で立ち上げた産官学組織「ジャパン・コスメティックセンター(JCC)」は、正会員が民間企業174社、大学など支援会員が19と拡大。正会員の3割は関東の企業で、名前通りに県の枠を超えて組織を広げている。

 市はこの4年間で計3億7625万円を投入した。国も注目し、ほとんどが地方創生などの交付金だ。「道路を造る事業と同じで、ソフトのインフラを整え、ビジネスがしやすい環境づくりをしている」と市コスメ産業推進室の八島大三室長(45)。今後のポイントの一つに「社長が生まれれば、雇用をつくり出してくれる」と起業家育成を挙げ、地域に根を張る企業の集積を思い描く。

 実際に奮起した人も現れた。JCC発足にも関わった元化粧品関連会社勤務の山浦康男さん(48)は「人任せでなく自分で作ろう」と農業法人「ハーベスト」を設立した。助成も受けてオリーブの化粧品を開発、「いずれは地元産で」と栽培面積拡大にも取り組む。

 世界を意識して「YOKO・JAPAN」を社名にした田中洋子さんも業界の経験を生かし「唐津をアピールしたい」とトマトと酒粕のエキスを配合した男性用クリームを発売した。「田舎で駆け出しの小さな会社から商品を発信するのは難しい」(田中さん)。2人は新年度に市が興す地域商社の役割に熱視線を送る。

 後続が出るには起業家の成功事例が欠かせない。農家の所得アップにつなげるには農作物の化粧品活用に使う成分の分量はわずかなため、量が求められる健康食品への展開もいる。

 農林水産業や商店街再生など現状維持で精いっぱいの産業支援策が多い中、地域産業の創生を論議できる自治体はそう多くない。原料生産に製造、販売など花開けば、周辺産業も含めて雇用の大きな受け皿ができる。種から出た成長の芽を伸ばせるか、行政のサポートも鍵となる。

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