5月は運動会の季節である。「えっ?」と反応される年配方もおられようが、昨今、佐賀県内でも小学校の4割弱、中学校で約半数が5月の運動会である◆熱中症対策や学校行事の分散化が主な理由。弁当で食べた青切りミカンと茹(ゆ)で栗のイメージは遠くなった。運動会の風景を描いたエッセーが、脚本家で作家の向田邦子にある◆小学校4年時の回想だ。クラスには足と目が不自由で、みんなになじめない女の子がいた。運動会は徒競走でいつも1人だけ取り残されてしまう。この日も、おぼつかない足元だが、一生懸命ゴールを目指していた◆途中、その子が走るのをやめようとした時、突然、女の先生が飛び出す。年配の小言が多い気難しい先生で人気がなかったというが、その子と一緒に走り出したのである。ともにゴールし、抱きかかえるようにして賞品の鉛筆をその子に手渡した。いても立ってもいられない行動を見た向田は「愛という字の連想には、この光景も浮かんできます」と書いた。運動場が温かな空気に包まれたことだろう◆スポーツが得意な子に光が当たり、讃(たた)える運動会もいい。だが、それぞれが持っている力を発揮し、頑張ることの尊さを感じられる場でもある。応援でも、分担されたお世話係でも出番が一人一人を輝かせる。5月のようにさわやかな一日を。(章)

このエントリーをはてなブックマークに追加