屋上から二酸化炭素分離回収装置を視察する箱根町議=佐賀市清掃工場

■情報非公開、透明性確保が課題

 佐賀市がバイオマス事業を加速させている。低炭素社会の実現に貢献し、新たな資源として注目される藻類の産業化に地方自治体が取り組む事例は少なく、トップランナーとして注目を集める。10日には産学官による協議会を設立し、藻類分野への民間参入を後押しする。一方、巨額事業にもかかわらず、企業との関係から市事業に関する情報が非公開となるケースも出てきた。事業の透明性確保が課題となっている。

 6月26日昼すぎ、市清掃工場(高木瀬町)の屋上。視察に訪れた箱根町議会議員の一人は、巨大な二酸化炭素(CO2)分離回収装置を見上げてつぶやいた。「うまくいけば(事業費の)倍以上稼ぐだろうけど、行政が危ない橋渡っているなと思う」。投資額の大きさと、前例がなく成功の保証がない巨大プロジェクトに対する率直な感想だった。

 市清掃工場には企業、行政関係者の視察が相次いでいる。市担当者は「清掃工場への視察は1年間で1千人以上が訪れている。下水浄化センターはそれ以上。市役所でもこの二つの視察は突出している」。昨夏に稼働したCO2分離回収装置の導入費は約14億円。培養地として企業に売却予定の北側用地約20ヘクタールの取得、造成には18億円かかる。

 装置で回収したCO2は、隣接地で藻類を培養する企業アルビータに売却している。同社へのCO2供給量と売却益は情報公開請求に対し、「企業の経営状況が類推される恐れがある」として非公開とした。

 20ヘクタールの造成地もアルビータ側が培養地として取得する予定だ。市は、売却益によって事業費は賄えると説明するものの、事業拡大後もCO2売却益などの情報は非公開となる恐れがある。

 市下水浄化センターでも概算54億円の計画が進んでいる。バイオガス発電と分離回収したCO2による藻類培養を描く。計画の下敷きとなるのが、センターで15年度から2年間続けた国土交通省によるB-DASH(ビーダッシュ)事業。下水処理の過程でCO2を回収し、藻類培養を手掛ける「ユーグレナ」などと培養技術の実証研究に取り組んだ。実証研究の成果報告は今夏にまとまる。

 今後のCO2分離回収事業でも、市清掃工場と同じく、企業への供給実績が公開されるか不透明だ。公開の判断について上下水道局下水プロジェクト推進部は「状況による」としている。

 市清掃工場、下水浄化センターの両事業は、ともに藻類培養を担う企業の動向に大きく左右される面もある。市とアルビータは、20ヘクタールの用地を取得する意向を書面で確認しているものの、ユーグレナとは今後の事業方針について文書での確認には至っていない。市議からは「これだけの市費を投じるのなら、事業を続ける企業側の確約が必要だ」との指摘もある。

 市が目指す産業集積には、藻類分野への民間参入が欠かせない。新設するバイオマス協議会は地銀を含む12者で組織し、培養技術や商品化などの情報共有、市場調査を進め、意欲的な企業を後方支援する。

 低炭素社会の実現と産業集積による税収増、雇用拡大-。どのような形で実現するか、市には具体的な説明が求められる。

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