九州北部を襲った記録的な豪雨で浸水し、流木などが流れ込んだ福岡県朝倉市の住宅地=6日

■急な大雨活用難しさも 

 九州北部を襲った記録的な豪雨では各地の河川が氾濫し、多くの人命が失われ、住民は避難を強いられた。政府は近年の激甚化する水害の教訓を踏まえ、ダムや堤防の整備だけでなく、住民の避難手順を定めた「タイムライン」の作成などソフト面を中心に防災対策を強化してきた。今回の豪雨で被害軽減につなげることができたのか。

 タイムラインは、豪雨などの災害を予測し、行政や住民が取るべき行動を時系列でまとめた計画だ。2015年の関東・東北豪雨や、昨年の台風10号による水害では高齢者や障害者の避難が後手に回ったことを受け、国土交通省は自治体への普及を後押しした。

 国交省によると、国が管理する大規模河川(109水系)の流域にある全730市区町村はタイムラインを作成済み。今回の豪雨では、水かさが上がり堤防決壊の恐れが生じた段階で国から市町村に連絡があり、計画に沿って首長が避難勧告や指示を出し、住民が行動したケースもあった。

 福岡県添田町の担当者は「タイムラインに基づき国から情報を得て、住民に早い段階で避難を呼び掛けることができた」と強調した。

 ただ、福岡県の担当者は「進路の予測が可能な台風では有効だが、今回のような豪雨はそもそも予測が難しい」と指摘。大分県中津市の担当者も「急な大雨だったので、活用できなかった」と述べた。

 国交省は6月、氾濫の恐れがある全国1562の中小河川の流域にある約千自治体にもタイムラインの早期作成を呼び掛けたが、作成済みは全体の1割程度にとどまっている。今回の豪雨で、未作成の自治体で避難勧告や指示の遅れにつながったケースがなかったか検証も必要となりそうだ。

 気候変動に伴い、水害は増加傾向にあるとされ、避難誘導の迅速化などのソフト対策は重要度を増している。本格的な台風シーズンの到来を控え、未作成自治体は作業のスケジュールの前倒しが求められる。【共同】

 ■ 死者が出た主な豪雨水害

 1999年6月 梅雨前線の集中豪雨により広島県で土石流や崖崩れが発生。県内で31人死亡、行方不明1人

 2004・10 台風23号。九州から関東の広範囲で大雨。95人死亡、行方不明3人

 11・9 紀伊半島豪雨で82人死亡、行方不明16人。うち三重、奈良、和歌山3県は死亡・行方不明88人

 12・7 九州北部豪雨で30人死亡、行方不明2人

 13・10 台風26号の大雨。大規模な土石流が発生した伊豆大島で36人死亡、行方不明3人

 14・8 記録的な豪雨により広島市で大規模な土石流が発生。77人死亡

 15・9 関東・東北豪雨。8人死亡。茨城県の鬼怒川の堤防が決壊

 16・8 台風10号が上陸し、岩手県と北海道で死亡・行方不明27人

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