捜査機関が秘密裏に運用してきた手法が否定された。最高裁大法廷は15日、衛星利用測位システム(GPS)端末を令状なしで取り付けるやり方を違法とした。「まさに満額回答だ」。人権重視の判断を弁護団は喜ぶ。被告の問題提起は、新たな立法につながる可能性も。GPS利用を控えるよう通達された現場の警察官からは「捜査が難しくなる」と不安が漏れた。【共同】

 「憲法の保障する利益を侵害する」。15日午後、最高裁大法廷に寺田逸郎長官の声が響くと、GPS捜査の違法性を問い続けてきた若手弁護士らは顔を見合わせ、うなずいた。判決後の記者会見では「まさに満額回答だ」と手応えを口にした。

 主任の亀石倫子弁護士は「今後、科学技術の発達に伴って新しい捜査手法が出てくる。人権とのバランスが問題になった際に必ず参照されるリーディングケースになる。新しい時代にふさわしい判断だ」と胸を張った。

 「本当に許される捜査なのか、という被告人の問題意識がきっかけで実態が明らかになり、こうして司法判断を仰ぐことができた。とても感謝している」と話した。

 弁護団の6人は、いずれも弁護士経験が10年未満。亀石弁護士は「経験が浅いので、基本に忠実に、アイデアを出し合って学んだことを実践してきた。最高裁が受け止めてくれたのは、すごくうれしく思う」と顔をほころばせた。

 小林賢介弁護士は、判決を受けた今後の法整備について「対象犯罪をどうするか、期間をどのくらいに限るべきかなど、非常に多くの課題がある」と指摘した。

■「犯罪実態見ていない」 捜査への支障、大阪府警懸念

 最高裁大法廷が15日、現行法での実施をいさめた衛星利用測位システム(GPS)端末を用いた捜査。審理された窃盗事件の“現場”となった大阪の捜査幹部からは「犯罪の実態を見ていない判決だ」「捜査の現場に支障が出る」などと驚きや懸念の声が上がった。

 大阪府警の幹部は「GPS捜査は対象を職業的な犯罪者集団に絞っている。判決で警察は手足を縛られ、犯罪者を利することになる」と語る。

 これまでの公判などによると、被告は複数の共犯者と車などの広域窃盗を繰り返したとして、府警が約半年の間に被告の車などに16個の端末を取り付け捜査。被告の車の下にはテープで巻いた端末を磁石で設置。商業施設への駐車時などに対象者の端末を交換、追跡した末に被告を逮捕した。

 府警刑事部の幹部は「GPS捜査は誘拐など身体に危害が及ぶ事件も想定している。必要な場面はいつ訪れるか分からないのに、新たな立法措置まで使えないのか」と今後の捜査を危ぶむ。検察幹部も「追跡が難しい状況ではGPSが有用。これまで摘発できたものが難しくなるのは好ましくない」と指摘する。

 一方、判決の影響は一部に限られるという見方も。別の捜査幹部は「基本は防犯カメラや自動車ナンバー自動読み取り装置(Nシステム)で容疑者追跡はできるし、携帯電話のGPS機能も活用できる」と話した。

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