捜査対象者の車に、衛星利用測位システム(GPS)端末を取り付ける警察の捜査手法について、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は15日、窃盗事件の上告審判決で「プライバシーを侵害し、強制捜査に当たる」との初判断を示し、裁判所の令状がなければ違法だと指摘した。【共同】

 その上で、現行法上の令状を取得することで捜査が可能かどうかについては「疑義がある」と否定し、GPS捜査の特性を踏まえた法整備を行い、特別な令状を発布する仕組みをつくるべきだとした。今後、法務省が立法作業に入る見通し。警察庁は15日、GPS捜査を控えるよう全国の警察に通達を出した。

 まず大法廷は、GPS捜査について「行動を継続的に幅広く把握し、プライバシーを侵害する」と指摘。端末設置などでプライベートな領域にも侵入し、憲法が保障する重要な利益を侵すため、令状が必要な強制捜査だと位置付けた。

 続いてどういう令状が適切かを検討。現行の刑事訴訟法が定める令状では、犯罪とは無関係な情報まで得てしまう上、手続きの公正さが確保されないことを問題視し、認められないとの結論を出した。

 裁判官15人全員一致の結論。うち岡部喜代子氏、大谷剛彦氏(9日付で退官)、池上政幸氏の3人は「法整備までの間、現行法でのGPS捜査が全て否定されるわけではないと考える」との補足意見を述べた。

 検察側は、仮に強制捜査であっても、令状の一つである「検証許可状」を取り、捜査後に対象者に示せば問題はないと主張していた。

 大法廷が審理したのは、関西を中心に店舗荒らしや車両盗を繰り返した罪に問われた男(45)の事件。一審大阪地裁はGPS捜査に「重大な違法がある」と指摘。二審大阪高裁は「捜査に重大な違法はなかった」とした。一、二審とも被告の供述などから罪自体は認めて懲役5年6月とし、大法廷も支持した。

 ■強制捜査 逮捕、家宅捜索、検証といった裁判官が出す許可状(令状)に基づく捜査。法律上は「強制の処分」と呼ばれる。身体の拘束や住居への立ち入りで人権を侵害する恐れがあるため、法律に根拠規定がある場合に限られる。尾行や張り込み、職務質問は、任意捜査で令状の必要はない。1976年の最高裁決定は「個人の意思の制圧」と「権利・利益に対する制約」の二つの要因を考慮して、強制捜査と任意捜査を区別する判断枠組みを示している。

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