デジタルカメラから消去された画像は、お金では弁償できない思い出だった。

 佐賀市で昨年末、自転車のかごからバッグを盗んだとして、窃盗罪に問われた50代の男性被告。生活保護費を使い果たし、金に困っていた被告は、バッグに入っていたカメラを、データを消した上でリサイクル店に持ち込んだ。

 持ち主の女性は、息子のクリスマス会の様子をカメラに収めていた。検察官は公判で女性の憤りを伝えた。「かけがえのない写真で、家族に見せようと思っていた」。許し難かったのだろう。弁償金は支払われたが、示談には至らなかった。

 証言台には、佐賀県外に住む被告の甥(おい)が立った。独り身の被告を気に掛けて4回ほど面会し、弁償金も工面した。「伯父さんは優しい面もある。小学生のころ、実家に帰ると、勉強を分かりやすく1時間でも2時間でも教えてくれた」と振り返った。

 思い出の情景を奪った犯行を省みる中、舞い戻る自身の思い出。被告人質問で、被告は社会復帰への意欲を口にした。「一日でも早く、世間一般の伯父さんと甥の立場に戻れるようにしたい」(判決=懲役10月)

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