被害の全容がまだつかめていない。それほど大きな災害だった。九州北部を襲った記録的な豪雨で、次々と犠牲者が増え続けている。大量の土砂や流木が道路を寸断し、高齢者を含め住民の孤立状態はまだ解消されていない。

 佐賀県地先の有明海沿岸で複数の遺体が見つかった。警察は筑後川上流域にある被災地から流れ着いたとみており、水害のひどさを物語る。

 救助を待つ人はどんなにか心細いだろう。行方不明者の捜索や孤立者の救出に自衛隊や行政などは全力を挙げてほしい。政府は救助部隊を増強したが、支援要請の幅は広がっており、関係省庁の力を結集すべきだ。

 被害が最もひどかった福岡県朝倉市では7月の月間平均の1・5倍もの雨が短時間で降った。今回の記録的豪雨は、同じ場所に積乱雲が次々に発生する「バックビルディング」と呼ばれる現象によって、大雨をもたらす「線状降水帯」が長時間維持されて起きたとみられる。

 こうした線状降水帯は九州の福岡、大分県の山間地で発生しやすく、2012年の九州北部豪雨も同じ仕組みだった。「非常に激しい雨」の降る回数は増えている。地球温暖化の影響の一つとみられ、局地的な集中豪雨は被害発生の予測が難しい。

 気象庁が福岡県と大分県に出した「大雨特別警報」は「数十年に1度の重大な災害」に当たる。2013年に新設され、今回初めて両県に出したが、発令した時は既に雨のピークは過ぎていた。

 大半の地区では特別警報の前に、住民に避難指示が出ていた。それでも多くの犠牲者が出た。このことの十分な検証が必要だ。

 電気や水道といったライフラインの回復は進んでいない。道路に大量の土砂などが流れこんでいるためだが、生活の不便は早急に解消しないといけない。避難所に身を寄せる住民は、蒸し暑さの中で疲れがたまりつつある。熱中症対策などがまず急がれる。

 災害は、佐賀を含めてどこで発生してもおかしくない。政府は近年の激甚化する水害の教訓を踏まえ、ダムや堤防の整備だけでなく、住民の避難手順を定めた「タイムライン」の作成などソフト面の対策も強化している。

 タイムラインは、豪雨などの災害を予測し、行政や住民が取るべき行動を時系列でまとめた計画である。まず自治体への普及を後押しているが、進んでいない。

 警報が出たら、何をしなければならないか。いざという時に慌てずにすむよう、あらかじめ時系列でまとめておくことがポイントだ。それを行政から最終的に住民レベルまでおろしていく。装備のチェック、避難経路と連絡態勢の確認など、やることは多い。

 家庭内でも父親、母親、子どもは何をするという分担を決め、把握しておくことが大切である。その中から常用している薬や貴重品などが上がってくる。個人レベルで担うことで、市町の負担も軽くなる。

 人ごとだと思わず、わが身に引き寄せて考えることが肝心だ。九州北部地方の梅雨明けは今月20日前後になる見込みだが、その後は台風シーズンがやってくる。今回の豪雨災害を機にいま一度、気を引き締めたい。(横尾章)

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