最高裁は、裁判所の令状がない衛星利用測位システム(GPS)捜査が「プライバシー侵害」であり、違法だと判断した。警察組織が法的な位置づけを曖昧にしたまま、なし崩し的にGPS捜査を進めてきたことを問題視したもので、立法措置を通じ、人権を尊重したルールづくりを求めている。

 最高裁は判決で、憲法35条の令状主義に言及している。<何人も、住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利がある。正当な理由にもとづく令状がなければ侵されない>。公権力が私的領域に「侵入」するのを戒めたもので、それはプライバシーについても同じだということだろう。

 海外を見れば、2012年に米国の最高裁が令状なしのGPS追跡捜査について違憲判断を下している。日本では「重大な違法はなかった」とする下級審の判決もあったが、最高裁が「GPS捜査は一律的に違法」という判断を示したことで決着がついたと言える。

 捜査機関にとってGPSの恩恵は大きく、今や手放せないものとなっていた。尾行や張り込みで、捜査対象者の動きを完全に把握するのは難しく、時間も人手もかかる。対象者の車にGPSの発信機をつけることで、その行動を1日中、監視できる。広域窃盗や薬物犯罪などで犯人検挙につながっているという。

 一方で、警察庁は06年に本格導入するにあたり、全国の警察組織にGPS使用を隠すように指示した。裁判では「尾行を補う任意の捜査の一つであり、違法性はない」と主張し続けている。ただ、容疑と関係ない行動の監視も続け、プライバシー侵害の恐れがあることを初めから分かっていたから隠し続けたのではないか。

 最高裁はGPS捜査そのものを否定してはいない。その成果を認めつつも、裁判所のチェックが働かないまま、捜査機関がむやみに使い続けている実態に危惧を示している。

 とはいえ、家宅捜索の令状のように、対象者に事前通知するのでは、GPSの追跡捜査の意味がない。裁判所の許可を得た上で、対象者には事後に説明する。また、通信傍受法のように、対象となる犯罪の種類を絞り込むなどの立法措置が必要で、最高裁はそれを求めている。

 もう一つ考えるべきことは科学技術の進歩により、捜査のあり方が大きく変わっていることだろう。一日中行動を追跡するGPS捜査もそうだが、地域の至るところに監視カメラが増え、多くの人の行動を記録し続けている。顔認証技術の精度も上がっており、監視カメラの映像から捜査対象者を検索し、捜し出す時代はすぐそこまで来ている。

 情報化が進んだ今、捜査機関も新技術を駆使することで、犯罪摘発が容易になった部分もあるだろう。しかし、そこから入る情報は捜査と関係のない私的なものも多いはずだ。人権侵害のリスクが大きく、もろ刃の剣であることを十分に自覚すべきだ。

 今回の判決は安易にGPSを使い続けてきた捜査機関への警鐘とも言える。不確実な疑いだけで、機械に任せて行動をチェックし続けるのであれば、それはただの監視社会ではないだろうか。(日高勉)

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