■患者の免疫力高める

 新しい年を迎え、医療の現場でも新しい治療法や健康維持の取り組みが進んでいくと考えられます。がんの免疫療法は古くから行われてきましたが、期待される効果は得られていませんでした。それに対して、数年前から始まった「がん分子免疫療法」はPD-1やCTLA4という特別な分子の働きを調整することにより、患者さん自身の免疫力を使って、がん細胞をやっつけようという新しい免疫療法のあり方です。

 オプジーボという薬に代表されるがん分子免疫療法薬は、悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎がんやホジキンリンパ腫に適応となり、今後さらに使用される範囲は広がると考えられます。

 がん分子免疫療法の特徴は、がん患者さんの体の中で抑えられていた免疫力を高めることによって、がん細胞と戦う力を回復させようとする、免疫支援治療ともいえます。患者さんへの直接ダメージが少ないので、今後は抗がん剤や放射線などと並行して行うことにより、治療効果を高める取り組みも進んでいくと思われます。

 すでに多くの患者さんに投与され、期待される治療効果が得られている一方で、いくつか問題点も指摘されています。その一つは副作用です。患者さん自身の免疫力を高めることはがん細胞と戦う力を回復させる点では好ましいのですが、ときに強すぎる免疫反応が患者さんの体を攻撃してしまい、予期しない副作用が出ることが報告されるようになってきました。

 もう一点は費用の問題です。患者さん1人当たり年間数千万円という膨大な治療費が必要であることから、無制限の使用は医療経済を破綻させてしまいます。今年は薬価の引き下げも決まっていますが、患者さんのためにならない無駄な使用を控えることが一番重要です。現在、がん分子免疫療法が効きやすい方法を見極めて適切に投与しようという取り組みが世界中で行われています。

(佐賀大医学部附属病院 検査部長・末岡榮三朗)

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