「肥前さが幕末維新博」のロゴマークをPRする山口祥義知事(中央)。任期を折り返し、残り2年で明治維新150年事業に力を注ぐ=佐賀市の日新小

 山口祥義知事が就任から2年を迎え、任期を折り返した。「現場」と「対話」を重視した県政運営を掲げ、「佐賀さいこう」「子育てし大(たい)県」など分かりやすいフレーズで目指す将来像を示し、「山口カラー」が鮮明になってきた。実直に課題に向き合う姿勢を評価する声は多いが、一方でソフト事業中心で具体的な成果が見えにくい点を挙げて「イメージ先行」との指摘も聞こえる。関係者の声をもとに県政運営の特色と評価をまとめた。

●政治姿勢

 県政運営のキーワードに「現場」「ミッション」「プロセス」を掲げる。現場を大切に、何のための事業か目的意識を忘れず、政策決定までの手続きや議論を丁寧に重ねる。「シンプルで当然のことと思いがちだけど、要点を外していない」と県幹部はうなずく。

 現場の声を重視し、議論を積み重ねるやり方には賛否が分かれる。ある自民県議は、佐賀空港へのオスプレイ配備計画への対応を挙げて「過去最大の県政課題とはいえ慎重すぎる。ここまで引き延ばすと、決断力を疑問視する見方も広がってくる」。さらに「古川前知事も現場主義を掲げ現場に足を運んでいた。要はこの姿勢を貫き通せるかだ」と強調する。

 一方、県幹部は「もともと大きすぎる国策。慎重になるのは当たり前」と理解を示す。「事業を進める側の論理で一方的に進めることもあり得る。それだと県民の感覚からずれて信用されなくなるという懸念があるようだ」と、県民の視線を意識しているとみる。

●組織運営

 現場での議論を重視し、政策の大まかな方向性は示すが、具体的な施策の中身などについては「つかさつかさの判断」との言葉通り担当部署の議論を尊重する。ある県幹部は「古川前知事は細かいところまでイメージを持っている『設計図』だったのに対し、山口知事はこういうものができないか提案して、あとは職員の意見や議論を積み上げていく『ラフスケッチ』」と手法の違いを表現する。

 担当課からの報告、説明はメールなどを活用するものの可能な限り直接説明を求めるという。「短時間でも直接やりとりをして確認する。現場任せにせず、必要なところで締めるやり方」と県幹部は明かす。 

●重点政策

 就任1年目で策定した総合計画では「人を大切に、世界に誇れる佐賀づくり」を掲げた。佐賀の魅力をアピールする「佐賀さいこう」を、県幹部は「新しい気づき」と評する。「『郷土に誇りを持つ』はみんなが思っていることだが、それが発展につながると真正面から言っているのは新しい価値観」と指摘する。

 中学生へのピロリ菌除菌助成、病児・病後児保育施設の拡大など「子育てし大県」の施策に関し、ある県議は「子どもたちを大切にするというメッセージの発信という点で成功している」と評価する一方、「恩恵を受けているのは一部。さらにきめ細かく対応できるか見ていく」と語る。

 自民県議の1人は「ソフト事業が中心で成果が見えにくく、単純にイメージで評価している県民もいると思う」との見立てを示し、別の県議も「佐賀県が進んでいく方向がぼんやりとしている部分もある。いろいろ発信しているが、議会答弁でもはっきり言わないことがある」と明確なリーダーシップの発揮を求める。

●キャラクター

 山口知事が好んで使う演出はサプライズでの表彰。リオ五輪7人制ラグビーで活躍した副島亀里ララボウラティアナラ選手に県スポーツ賞を授与した際、夫を献身的に支えたとして妻の彩さんにも「佐賀さいこう表彰」を贈った。「しっかり見ているということを伝えるのと同時に、努力に対してちゃんと評価したいとの思いがあるのでは」とある県幹部は推し量る。

 ざっくばらんに打ち解けた感じで接する姿は県庁内でも「話しやすい」と評価がある一方、来客などに壁をつくらず「ため口」で話す姿に県幹部は「冷や冷やすることもあるが、キャラクターなのかな」と話す。

■県政採点「60~80点」政党や団体

 県内の政党や団体などに山口県政の2年間を100点満点で「採点」してもらったところ、60~80点が多勢を占めた。好意的な意見が挙がったものの、「本当の評価が決まるのはこれから」との声が相次いだ。

 山口祥義知事の音頭で「ものづくり」の雇用創出や人材育成に力を入れる。県商工会議所連合会の井田出海会長は「佐賀の魅力を発信する取り組みなどで県の認知度向上に貢献しており、県外の取引先などからも『佐賀の話題が増えた』とよく聞く」と80点をつけた。

 山口知事誕生の基盤となった農業団体。JA佐賀中央会の金原壽秀副会長は点数は示さず「就任直後の鳥インフルエンザへの対応や佐賀牛の繁殖農家支援など県を挙げて農業問題に適切な対応をしてもらっている」と評価した。

 昨年5月、山口知事を学校に招いてイベントを開いた短大生の佐々木優喜さん(20)=佐賀市=も「学生の提言に応じる形で、子育て環境の充実を約束してくれた。知事が妊婦ジャケットを着た動画ができたことを知り、『ちゃんと考えてくれている』と思った」。ただ「実績はまだまだだと思う」とも感じている。

 玄海原発の再稼働や佐賀空港への自衛隊新型輸送機オスプレイ配備計画など国政課題は重要局面を迎える。「今後、決断を迫られる場面が訪れるとは思うが、信用している」(県有明海漁協の徳永重昭組合長)、「対応に期待し、注目している」(井田会長)。多様な要望にどう応えるか、真価が問われる後半2年となりそうだ。

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