世界を襲った大規模サイバー攻撃に北朝鮮のハッカー集団が関わった疑いが出てきた。経済制裁強化で国際金融システムから排除されながら核・ミサイル開発を続ける金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の体制下、外貨獲得の数少ない手段として攻撃を加速させているとの見方が浮上。米情報機関が機密にしてきた高度なハッキング技術が悪用された可能性もあり、国際社会は警戒を強めている。

■酷 似

 北朝鮮が過去の攻撃で残した痕跡と酷似している-。米当局者と米シマンテックなど複数の情報セキュリティー会社の分析が一致した。今回使われたマルウエア(悪意あるソフト)を調べたところ、北朝鮮傘下とされるハッカー集団「ラザルス」が使ったプログラムと似ているというのだ。

 ラザルスは、金正恩氏暗殺計画を描いた映画を公開したソニー米子会社を狙った2014年のハッキングや、8100万ドル(約92億円)が盗まれたバングラデシュ中央銀行に対する昨年のサイバー攻撃に関与したとされる。一連の事件で使われた北朝鮮ハッカーに特徴的なコードが今回も確認された。

 捜査をかく乱するため、何者かがコードを偽装した可能性も指摘される。ただ、北朝鮮は近年、サイバー攻撃能力を強化。元米政府当局者は「外貨を稼ぐために、国家ぐるみのサイバー攻撃を一層拡大する懸念がある」と危ぶむ。

■代 償

 攻撃が各国当局者を震撼(しんかん)させたもう一つの理由は、ネット上に監視網を張り巡らす米国家安全保障局(NSA)が大金を注いで開発した極秘技術が悪用された恐れがあるからだ。

 NSAは市販ソフトの欠陥を突いて外国コンピューターをハッキングする技術の開発に取り組み、イランの核開発阻止でも一定の成果を上げた。「サイバー空間の核兵器」(元イスラエル情報当局者)とも称されるこうした技術が昨年、ネット上で暴露され拡散した。

 米当局者は否定するが、NSAの情報収集の実態を明らかにした中央情報局(CIA)元職員スノーデン氏は「NSAは危険な道具を生みだした。今起きているのはその代償だ」とみる。

■拡 大

 被害は拡大の一途をたどり、約150カ国で30万件になった。ロシアでは官庁や銀行が標的となり、中国では警察や学校など3万近くの機関が攻撃された。日本でもJR東日本や川崎市など約600カ所で2千端末がウイルスに感染。韓国、インドネシア、インドでも病院のシステムがダウンするなどした。

 各国政府と企業はウイルス駆除ソフトを更新するなどセキュリティー対策を強化。だが、元情報当局者はNSA技術の悪用が疑われる状況を踏まえ「今後さらに重大な事態が起きるだろう」と警告した。(ワシントン、東京共同)

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