2017年、藤津郡の佐賀天文協会太良観測所で撮影した干潟星雲と三裂星雲

2009年、中国で撮影した皆既日食

2013年、千葉県で撮影した馬頭星雲

 広告写真はまず“物”を撮ることから始まった。しかし自分が撮りたいのは“人”。人と会話しながら仕事がしたい。会社に所属はしても、カメラマンは個人商店。自分でやりたい仕事は自分でつかむしかない。「自分にはこれだけの物が撮れる。一緒にやりませんか?」-モデルを探して作った作品集を手に、デザイナーへ売り込んだ。

 1987年に入社し、それから仕事、仕事、仕事の日々。再び夜空にカメラを向けたのは、2009年の皆既日食。日本と中国で見られることを知り、天気の都合で中国へ。仕事でそろえた撮影機材が十分にあり、中学時代以来、約30年ぶりに天体望遠鏡と赤道儀を買った。

 皆既日食の当日。昼が夜の闇に包まれていく不思議な感覚を味わいながら、童心に帰ることができた。日食の撮影にも成功。中学生のころどんなに頑張っても撮れなかった天体は、ただの憧れから被写体に変わった。

 それからのめり込んでいく。平日、仕事終わりに東京から300キロ離れた暗がりへ行き、重量数百キロの機材を用意しては、一晩中星を撮り続けた。翌朝仕事でも、星を見ていれば一瞬でも全てを忘れられる。入社以来、20年近く仕事漬けだったからこそ、何より貴重な時間だった。

 -「どう?」。星の写真を同僚に見せると、「図鑑みたいだね」と思わぬ言葉が返ってきた。

 図鑑……、「作品」ではないということか-。

 一晩中撮り続けた何千枚もの星の写真を合成してみた。すると、少しずつ動いていく点が線になり、星の軌跡になった。子どものころから宇宙に憧れ、しかし撮れず、広告写真を撮り続け、再び夜空を撮り始めた自分-今まで歩んだ道のりも、一つの線でつながった。

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