安倍晋三首相の友人が理事長を務める「加計学園」の獣医学部新設計画を巡り衆参両院で閉会中審査が行われ、文部科学省に首相官邸や内閣府から強い圧力がかかったとする前川喜平前文科事務次官が野党側の参考人として出席した。与党側も国家戦略特区ワーキンググループ委員らを参考人に立て、質疑は両院合わせ約7時間に及んだ。

 特区の愛媛県今治市で加計学園が事業者に選定される過程に次官として関わった前川氏は首相補佐官らに手続きを早めるよう迫られ、内閣府との調整で文科省が萩生田光一官房副長官を頼った経緯などを踏まえ「担当は内閣府だが、背景に官邸の動きがあった」と指摘。「行政がゆがめられた」との認識を示した。

 与党側の参考人は「『加計ありき』は全くの虚構」と主張。萩生田氏は働き掛けや指示を否定し、特区制度を担う山本幸三地方創生担当相も「何ら問題はない」と強調した。しかし記録文書などの裏付けに乏しく、「早期開学」を迫ったとされる萩生田氏や内閣府側の発言を記録した一連の文科省文書や前川氏の証言ほどの説得力はない。

 安倍首相も出席する閉会中審査や予算委員会の集中審議が欠かせないのは言うまでもないが、「言った」「言わない」という応酬を繰り返しても、らちが明かない。政府は記録など具体的な根拠を示し反論すべきだ。

 文科省文書や前川氏の証言などによると、獣医学部新設について内閣府側が強硬な姿勢に出るのは昨年9月。「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」として文科省に「平成30(2018)年4月開学」を迫った。前後して、前川氏は内閣官房参与や首相補佐官から認可の手続きを早めるよう促された。

 10月に入り、萩生田氏が調整役を引き受けて内閣府や首相補佐官と話をするが、下旬になり「総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた」「官邸は絶対やると言っている」と文科省幹部に告げた。また、そのころ萩生田氏の指示により、加計学園に有利になるよう獣医学部新設の要件が修正されたという。

 萩生田氏が「私の方で整理しよう」と調整を引き受けたとする文書は文科省の調査で確認されていないが、前川氏は「在職中に目にした」と証言した。萩生田氏は文科省側から相談を受けたことは認めながらも「発言の記憶はない」とした。

 その後、安倍首相が11月に特区諮問会議で獣医学部新設に向け制度見直しを表明。今年1月には加計学園が事業者に選定された。前川氏は「獣医学部新設の要件が次々に付され、加計学園に決まるようプロセスが進んだように見える」とし、15年に閣議決定された「獣医師の需要動向」など新設の4条件が十分検証されなかったと述べた。

 前川氏の証言は一連の文科省文書の内容と無理なく重なり合う。だからこそ「加計ありき」の疑念が深まっている。しかし内閣府は当初から、その内容をことごとく否定する一方で、文科省とのやりとりや内閣府内の議論を記録した文書はないと繰り返すばかりだ。

 記録はない、記憶もない-では、いつまでたっても疑念は拭えない。今後、国会が外部の第三者に参加を求め、官邸や内閣府、文科省など関係府省庁で記録文書確認や聞き取り調査を進めることも考えるべきだろう。(堤秀司)

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