玄海原発3、4号機の再稼働に向けた地元同意手続きについて、県に唐津市の意見を考慮するよう求める坂井俊之市長(左列の中央)=6日、佐賀県庁

■時にはブレーキ役も

 仕事始めから2日後の6日朝。唐津市の坂井俊之市長は県庁で副島良彦副知事と向き合った。「40年の歴史がある。隣接地でなく唐津は地元」。10分余りの面談で矢継ぎ早に言葉を連ね、九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に向けた地元同意に関し、市民の意向を反映するよう強く求めた。

 任期満了まで1カ月。次期選挙への不出馬でしがらみから解放されたのか、坂井氏の主張は明確だった。ただ要請後の記者の質問には、こう前置きした。「国策なので最終的には国の判断が一番重要だが…」。人ごとのようにも映った。

 玄海原発再稼働に向けた動きは大詰めだ。原子力規制委員会の審査合格が18日に出る見込みとなり、焦点は地元同意手続きへと移る。国は「地元」の定義を明示していないが、再稼働した他県の例を当てはめると、判断するのは県と立地自治体の玄海町だけ。「準立地自治体」の唐津市に同意の権限はない。

 合併によって市域は玄海町を取り囲み、原発の半径5キロ圏内には同町を上回る約4400人が暮らす。昨年、原発から数百メートルの距離にある鎮西町串地区の一部住民が使用済み核燃料の中間貯蔵施設誘致の意向を市に伝え、後に撤回した。同じリスクを抱えながら、自治体の線引きで受けられる“恩恵”が違う-。住民の複雑な思いに対する市の答えは、今もない。

 「国に右にならえでは駄目。住民の不安を誰が代弁するのか」。唐津同様、ほぼ全域が30キロ圏に入る伊万里市の塚部芳和市長は再稼働反対を鮮明にする。

 広範囲に及んだ福島第1原発事故の被害を受け、伊万里市は安全協定で立地自治体並みの「事前了解」を求めて九電と30回以上の交渉を重ねた。壁になったのは唐津市の前例。共闘態勢を築く前に、重要事象の「事前説明」で折り合いを付けた協定を結ばれ、「はしごを外された気分だった」と塚部市長。温度差を感じたままだが、「唐津も伊万里も原発と向き合う運命共同体。今後は1+1を2プラスアルファにする連携ができれば」。

 30キロ圏の自治体は3県8市町。その一つで人気観光地の福岡県糸島市は圏内に約1万5000人が住む。昨年3月議会で、再稼働の同意権を求める3000人の署名を基に原発に関する法的整備を求める請願が提出されたが、1票差で否決された。

 安定ヨウ素剤の全戸配布を要望する僧侶の甘蔗健仁(かんしゃけんにん)さん(43)は「糸島市は賛成、反対の土俵にすら上がれていない」と指摘、「玄海町は当事者だから言えないこともある。冷静に判断できるのは唐津や伊万里。トップにはその責任を感じてほしい」と注文する。

 原発の「地元」として本気で向き合い、時にはブレーキ役になれるか。新市長の姿勢が周辺自治体に与える影響は決して小さくない。

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