映画監督として黒澤明の名を一躍世界に知らしめた作品に「羅生門」(1950年公開)がある。ベネチア国際映画祭でグランプリをとった。それまでの日本映画にはない、前衛的な作品で、公開時は「難解」といわれた◆平安時代の乱世に、とある殺人事件について当事者や目撃者らがそれぞれ自分の都合で証言内容を変え、さっぱり真相が分からないという筋である。一つの事件を幾通りにも解釈でき、哲学的でもあることから外国人に評価が高かったようだ◆いつの世も真実は一つなのに、どちらかが反している。学校法人「森友学園」への国有地売却問題が急展開を迎え、学園の籠池(かごいけ)泰典理事長が「安倍首相から100万円の寄付を受けた」と証言し、波紋を広げている。首相側が否定する中、籠池氏の証人喚問が決まった◆もし寄付が事実でも、公選法には抵触しないというが、安倍首相は「国有地問題に関わっていたら首相も国会議員も辞める」と言っていたのだから、厳しい目が向けられよう。そもそも、なぜ問題の国有地が8億円余りも値引きされたのか、政治家の関与はなかったのかが問題の本質だ。喚問では、こうした疑問の答えもぜひとも聞きたい◆国民はとても無関心ではいられない。映画の世界ではなく現実の世。籠池氏には虚飾なしに真実を語ってほしいものだ。(章)

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