若手が主力となって田植え作業をするドリームファーム福富。法人化を機に「ふるさとの農地を守る」という意識は強くなった=嬉野市塩田町

 「農」への憧れを抱く人は多い。だが、「業」にするとなると、ハードルは高くなり、農業県といわれる佐賀県でも担い手の確保は重要な課題になっている。農地を守り、耕作を続けていくため、将来を見据えた態勢づくりを進めていきたい。

 県内の基幹的農業従事者数は約2万4千人で、このうち65歳以上が6割近くを占めている。25年前のデータを見ると、約4万3千人で、65歳以上は2割弱。総数は大きく減少し、高齢化も急速に進んでいる。近い将来、農業からリタイアする人が増えるのは確実で、農業経営の継続に向けた取り組みは喫緊の課題である。

 さらに、環太平洋連携協定(TPP)の動きや輸入農産物の増大、産地間競争の激化など、農業情勢は厳しさを増している。農業を続けていくためには何を作るか、どう販売するか、戦略を持って収益を上げる努力がいる。

 こうした状況の中で、国や県、農業団体は対策の一つとして集落営農組織の法人化を進めている。県内には470(昨年11月現在)の集落営農組織があり、このうち法人化されているのは68組織。法人化の割合は14・5%で、全国平均に比べると、10ポイント以上低くなっている。

 法人化に踏み込まない理由としては「現状のままで何とかなっている」という声が聞かれるという。ただ、これからを考えると、法人化して生産する作物や品種を調整したり、加工・販売事業などで経営を多角化したり、若い担い手を雇用したりと、農業経営の基盤強化が必要になってくる。

 2015年度の佐賀農業賞で最優秀賞を受けた神埼市の「小鹿ファーム」は水稲の直播(じかまき)栽培で省力化を図り、収益性を高めるために露地のキャベツ栽培を導入した。県内では法人化の先駆けとなった組織で、黒字化も実現している。優秀賞に選ばれた唐津市の「行合野」は兼業の小規模農家で設立。地域の結束で農地を守るとともに、生産作物の見直しなどで収益アップを目指している。

 佐賀新聞では昨年の連載企画で、若い世代を呼び込んでいる嬉野市の「ドリームファーム福富」や団地化を進める「アグリ三新」など県内の先進事例を紹介した。各法人は組合員の構成や農地の規模、環境など地域の状況に応じて工夫し、成果を上げている。

 法人化には、経理や財務の実務負担や土地利用権の設定など乗り越えなければならない課題もあるが、県は必要経費の補助制度を設けているほか、農業改良普及センターが研修会などを開いて後押ししている。5年後、10年後を見据えた時、現状のままで地域の農業を守れるのか。県内の先進的な組織を参考に、それぞれの地域で向き合ってほしい。(大隈知彦)

このエントリーをはてなブックマークに追加