NPO法人それいゆ 副理事長 一般社団法人日本自閉症協会 理事・事業企画委員 江口寧子(やすこ)さん

■《発達障害》の現状

NPO法人それいゆ 副理事長

一般社団法人日本自閉症協会 理事・事業企画委員

江口寧子(やすこ)さん

●親も、社会も正しく理解し受け入れてこそ

 かわいいわが子に「発達障害の可能性がある」という現実に向き合ったとき、親はどんな気持ちになると思いますか。「なんでうちの子が」「私が普通に産んであげられなかった」「これからどうしたらよいのだろう」とさまざまな思いが駆けめぐることでしょう。

 《発達障害》は、早期に発見し療育を受けることで、障害特性からくる困難を予防できるといわれています。佐賀県は発達障害児・者に関する支援体制が、全国でも最も盛んな自治体のひとつです。県内のどこに住んでいても、乳幼児期~学齢期~成人期と生涯にわたって「きめ細やかで、途切れのない」支援が受けられるような体制が整えられています。

 しかし、これだけ充実した支援体制であるにも関わらず、すべての人がその支援を受けているわけではありません。行政がどんなにサービスを提供しても、親が支援を受け入れる事を希望しなければ、始まらないからです。

 子どもの発達の遅れや違いに気が付いていても、社会や家族の偏見や、子育や目に見えない将来への不安などで、子どもに障害があるのを受容することが難しい場合があります。検診時や幼稚園・保育園の先生が、発達の違いを伝えても、「気になりません」「そのうちよくなるから」「大丈夫です」という反応だったり。発達の違いを伝えるのは、保育士にとって、とても難しいことです。確かに保育士は発達障害の専門家ではないかもしれません。しかし、これまで多くの子どもたちを見てきた「子どもの専門家」だからこそ感じる「違和感」があったら、自信をもって伝えてほしいです。子どもの視線で、その子がどんな風に困っているかを伝え、「その子が悪い」と受け取られないように、保護者の不安に寄り添った言い方ができたらいいですね。

 幼児期はそれなりに過ごせていても、成長とともに集団の中での暗黙の了解など、難しい社会性を求められることが多くなり、学校生活で困難を感じてしまうケースもあります。親としては、「少しくらい変わっていても、成績がいいから大丈夫」と思うかもしれません。発達障害は知的な遅れを伴わない障害なので(知的な障害と重複の人もいます)、高学歴な人も多いです。しかし、無事大学を卒業しても、社会人になり、学生時代とは違った責任やノルマ、臨機応変な対応などにストレスを感じ、仕事を継続できなくなるような場合も多いのです。

 親が子育てに悩んだときに、子どもが発達障害であることを知らなければ、「しつけを厳しくする」「勉強を頑張らせる」しかできませんが、それが子どもに適した対応ではないことにはなかなか気づきません。子どもにとっては、暗黙の了解やルール、マナーが理解できていないのに、「どうしてみんなと同じようにできないのか」と責められるのは、霧の中でもがいているような、わけが分からない状態だと思います。「指示に従わない」「反抗的」なのではなく、その子にわかるように説明されていないと考えてほしいです。「できない」ことを責めずに、「どうしたら理解できるか、できるのか」を考えていくことが療育であり、支援だと思います。

 また、本人が支援を受け入れるためには、自分自身を理解することが大切です。「人はそれぞれ違っている」ことを学び、人と自分の「同じ」と「違い」を知り、自分自身と向き合って「支援を受ければできる事がある」「自分には支援があった方がよい」と理解することで、学校や社会で起こる問題を予防できるようになります。

 診断前の保護者が、「問題が起きたら、受診や療育を考えます」といわれることがあります。さまざまな体験がネガティブな記憶となり、社会性の弱さを持つ本人たちが、誤学習したことを変えるのは難しいかもしれません。予防をすることで、今後のリスクを軽減でき、社会に適応した生活が送れるようになってほしいですね。

 ひとりひとりが、自分の持つ力を発揮できる環境で勉強や仕事ができ、社会の一員として生きていくためにも、社会が理解し、受け入れることが大事だと思います。

取材協力/

[特定非営利活動法人 それいゆ]

発達障害(自閉症スペクトラム、ADHD、LD)特化型の支援機関。未診断から療育まで、発達障害についての全般的な支援を行っている

【DATA】

住 所:佐賀市鍋島町蛎久226-1

電 話:0952-36-8751

H P:http://npo.autism-soreiyu.com/

このエントリーをはてなブックマークに追加